第69回全日制課程 卒業証書授与式  答辞【全文】
 

 若々しい桜の蕾が膨らみはじめ、冷たい空気の中にも春の訪れを感じる今日。大きな期待と不安を抱きつつ、あたたかな陽射しがさす入学式を終えた平成二十六年から、めまぐるしく過ぎ去る日々もはや三年に至り、ついに卒業を迎えることになりました。私たち卒業生のために、このように厳かで盛大な卒業式を挙行してくださった先生方、在校生の皆さん、ご多忙にもかかわらず足を運んでくださった皆様に、卒業生を代表して心から感謝申し上げます。

 東日本を襲った未曽有の大震災から、あと十日で六年が経ちます。当時、私たちは卒業を間近にした小学校六年生でした。本日参加している卒業生の多くは予定していた卒業式を挙行できず、縮小または中止の措置が取られたかと思います。私も卒業式は予定していた体育館が避難所となったために特別教室へと変更になり、先生方のみに見送られながらの少し寂しい式でした。そして今日、最後の卒業式を迎える卒業生も少なくはありません。そのような節目の日を、こうしてたくさんの方々に見送って頂けることが、大変うれしく、感慨深く思います。誠にありがとうございます。先ほどは加藤雄彦校長先生をはじめ、ご来賓の方々、大竹会長から力強い励ましの言葉と温かい餞の言葉を賜り、深く心に刻むとともに、新たな旅立ちを思い自然と背筋が伸びます。長いようで短い高校生活を振り返ると、たくさんの出会いと別れ、そして思い出にあふれていることに気がつきます。初めてそれぞれの教室で顔を合わせたとき、お互いなかなか会話も弾まず、これから仲良くなれるだろうかと不安な顔をしていたのをよく覚えています。同じ中学校に通っていた、入試の際に会話したなど交流のあった人同士が親しくなり、ゆっくりと輪が広がっていき、しだいに教室は賑やかになっていきました。はじめは会話のきっかけを探して悩んでいた私にも多くの友人ができ、親友と呼べる仲間たちにも恵まれました。そのような友人たちと毎日遅くまで勉強や部活動に励み、語り合い、時にはぶつかり合い、学校行事を通して多くの時間を共有してきました。

 クラス対抗で団結力と勝敗を競った「スポーツチャレンジ」、今まで交流する機会がなかった人ともウィンタースポーツを通じて会話が弾んだ「スキー・スノーボード教室」、互いに励ましあいながら毎日集まって練習した「合唱コンクール」、先輩方の勢いや出店・展示、パフォーマンスの完成度に圧倒されながらも、負けないように工夫と努力を重ね一丸となって取り組んだ一年次の「育英祭」、獅子奮迅をテーマに掲げ、全校生徒による動画撮影や各クラスでの出店・展示、屋内外ステージでのパフォーマンスなど、コースの垣根を越えて作り上げた二年次の「育英祭」、京都、北海道、沖縄など貴重な校外での研修を通して、現地の街並みや文化に触れながら学びと友情を深めた「研修旅行」、飲酒運転根絶が理想ではなく実現可能な目標であることを訴え、啓もう活動や記念碑参りをした「アイライオンデー」など、私たちは多くの行事を経て仲間との絆と学びとを深めてきました。これら一つ一つが今の私たちを支える大切な基盤であり、財産であるのだと思います。仙台育英学園は学びを求める生徒にどこまでも扉を開いている学校です。ここで過ごした三年間は、勉強や部活動に打ち込めるのは勿論のこと、この学び舎を飛び出して自分のやりたいことに挑戦できる機会に恵まれた、充実した時間でした。

 私たちは多くの経験を通じて人間として大きく成長してきました。また先生方も進学・就職など進路をはじめ、勉強、部活動、資格取得、語学研修、留学など私たちがやりたいこと、目標とすることを徹底して応援してくださいました。私たちは常に多くの方々の支えをいただいていたのだと切々と感じます。優しく時に厳しく指導してくださった先生方、いつでも手本・目標となってくれた先輩方、私たちを慕ってくれ、そして仙台育英の伝統を引き継いでくれる後輩たち、多くの思い出を共有し切磋琢磨しあった仲間たち、いつも私たちを支えてくれた家族、お世話になったすべての方々に心からの感謝を申し上げます。

 私たちは今、新たな生活、そして今まで触れることのなかった未知の世界へと手をかけています。私たちがこれから歩んでいく社会は、膨大な情報にあふれ、様々な主義主張が叫ばれ、あらゆる価値観が存在しています。様々な意見が存在する中で、話し合い認め合う姿勢を持つことは特に現代社会に求められる力です。しかし私の考える正義があるように誰かの考える正義があり、相反し両立しない二つの意見は時にはぶつかりあうことも、認め合うことができないこともあるでしょう。そのような時、「あいつとは合わない」と距離を取ることも一つの手段として、人間関係を円滑にするうえで重要なことだと思います。ですがこの多様な社会の中で、お互いが成長するためには、どちらの意見も踏まえたさらに高次な意見を形成することが求められていると思います。ドイツの哲学者ヘーゲルの言葉を借りれば「アウフヘーベン(止揚)」することです。自分の考えに固執して相手の意見を貶すのではなく、互いの意見の欠点、短所を克服し乗り越え、利点や長所を合わせ、高めるということです。これからの社会を担っていく我々若者の役割は、この止揚を行うことで社会をより良いものに変化・発展させることであると考えます。

  宮城野校舎一階の「Great Principle's Hall」には創立の精神である「誠実」、「自信」、そして「責任と決意」が英字で記されています。あまり触れる機会のなかった言葉ですが、私たちはこの学び舎で誠実さを学び、自信をつけ、責任感をもって物事に取り組む姿勢を身に着け、その責任の下たくさんの決意・決断をしてきました。多くの希望と困難が存在する社会では、三年間を通して育んだ知識、経験、技能、友情が大きな力となり、私たちの支えとなります。そして利吉先生が掲げるこの四つの教えを胸に刻み実践することで、私たちの持つ力をいかんなく発揮し、社会に貢献できると信じています。何事も学ぶ姿勢をもって怠らずに日々邁進していきたいと思います。

 結びになってしまいましたが、校長先生をはじめすべての先生方、職員の皆様、 並びに本日御臨席を賜りましたご来賓の皆様の御健康と御多幸、仙台育英のさらなる飛躍・発展、そして学び舎を共にした同期たちの御活躍と御健勝とを祈念して、答辞とさせていただきます。

平成29年3月1日
卒業生代表 特別進学コース 関本さん