お知らせ

「ワールドピースゲーム(WPG)」を実施しました

世界中が今、直面している課題解決へのアプローチ

 コロナ禍でもWPGジャパンのファシリテーターからオンラインでの講演や指導を受けながら実施してきたWPGを今年度は11月2週目に1週間かけて対面で実施しました。2Sと3Sの生徒(計68名)が2つのグループに分かれて、日頃はあまり考えたことのない「世界が実際に直面しているような政治的、経済的、社会的、環境的など、提示されたの様々な危機的な課題を何とか自分たちの手で解決する」よう試みることで「世界平和」についてじっくり考え、「どうすれば世界を平和することができるか」という難しい課題解決に取り組みました。
 生徒たちはグループ内に設定した4つの仮想国家の内閣(首相や国防大臣など)と国際機関のリーダー(事務総長や世界銀行総裁など)の役割を担当して、様々な交渉を試み、決断を下し、 複雑に絡み合う自らの国と世界の国々との課題解決を目指しました。
 このようなWPGへの取り組みを通して、答えのない難題に向き合い解決を目指す姿勢、深い思考力、交渉力、決断力、協働する力など、これからの社会に必要とされる大切なスキルが身につきます。同時に、様々な課題を時間内にクリアできるかどうかを賭けて取り組むうちに、自由な発想や創造力が喚起され、自らの可能性に気づき、様々な大切なスキルも身につくようになります。
 
<ワールドピースゲームとは> 
1978年米国の小学校教師だったジョン・ハンター氏が考案した世界の課題解決型シミュレーションゲームです。これまでに40年以上改良を続けており、世界が実際に直面しているような、政治的、経済的、社会的、環境的など様々な問題が、危機として提示され、参加者は、なんとか自分たちの手で問題を解決するよう試みます。そのなかで、答えのない問いに向き合い解決を目指す姿勢、深い思考力、交渉力、決断力、協働する力など、これからの社会に必要とされる大切なスキルを身につけることができます。


※公式ホームページ(http://worldpeacegame.jp)より抜粋

 

生徒たちの感想【「World Peace Game 振り返りシート」から抜粋】

 
Q.平和を達成するために武力は必要でしたか?それは、なぜですか? 
  • 必要ではなかった。私達のグループでは、クライシスにある状況以外で新たな戦争を起こしたり兵や核兵器を実際に使用したりする場面は見られなかったと記憶している。また、多くの戦争や紛争にまつわるクライシスへの対応策は停戦や終戦などを条件としたものだった。そのため、このワールドピースゲームでは武力は必要ではなかった。 その一方で、多くの国や組織が核兵器や兵力を武器に取引したりしていたため、「争わないための武力」という一見矛盾したものが、実はとても大切で多くの交渉に必要なものであったと気づいた。
  • 戦いはたとえ勝ってもまた新たな戦いを生むだけだと思い、いかに戦わずして勝つことができるかを考えたり、平和的解決のために話し合ったりする方向での解決を望んだ。この結果、武力を使わずに平和を達成することができたため、解決のために武力は必要ではなかったと思う。
  • 必要ではない。武器商社として、武器を他国に使わせる方法、買わせる方法を考えていたが、武力を使わずとも国同士の争いはどんどん解決していったので、武器を使う理由や売る方法が思いつかなかったからである。武力を使うことは、国々に争いをもたらすこととなり、平和達成から遠のいていく元となると思う。
  • ゲームの最中にもクライシスレポートの問題でミサイルが打たれたり核兵器が見つかったりと様々な武力がありましたが、武力があったせいで私の国が滅亡しそうになったこともありました。武力は、私たち人間の心を破壊し、平和にすることは不可能だと思います。現実世界でも同じことが言えると思います。
  • 武力は必要だと思います。今回のゲームでは闇の組織がいて、理由もなく攻撃してくる場面がありました。そういったものに対しての防衛という面での武力は必要であると思います。しかし、この武力を攻撃で使ってしまうと戦争などの争いごとになってしまうので、あくまで防衛だけ、という武力は必要であると思います。
  • 必要だった。武力は、行使するだけのものではないと知った。武力がない国は結局、最終的な決定権が弱かったりする。相手に核とかで脅されたりするとき、反撃もできないし、言い返せない。
  • 多少の武力は必要だったと思います。武力が相手の暴走を縛りつけたり、抑止力になったりすることから、最低限の武力は必要でした。

Q.他の国にとって「いい国」になるには、どのような方法があると思いますか? 
  • 自国の利益は守りながらも、相手の国に武力を行使しないこと、条件を提示し譲ってもらうこと(対価を提示する)や、時には譲ること、そして世界から少しでも戦争を減らそうとする姿勢を示すこと。
  • まず、自分勝手に行動するのではなく、他の国の意見に耳を傾けることが重要だと思います。また、他国が大きな問題に直面した際は助けること、そして、話し合いをするときは相手の立場のことも考えながら、穏やかに話し合うなどをすると、いい国になると思います。
  • その国がどんな問題を持っているか、自国ができることはないか、両者のことを考えられるようになること。
  • その国と同盟を結び、その国が危機に陥った時に助けることだと思います。また、貿易をすることです。
  • 国が豊かになり、経済状況もよくたくさんお金が入って来る状態が続くことが大切だと思います。私のクラスではお金の動きが良いときこそ、戦争が起こらなくなっていたからです。各国が何らかの形で儲け続ければ、いい国になると思います。
  • 外交をしっかりして、対等な価値のものを対等な分を貿易することと、他の国がピンチのときに進んで交渉に出ることが大切だと思います。

Q.交渉を成功させる秘訣はなんだと思いますか?どうしたら「優秀な交渉人」になれると思いますか? 
  • 相手のことも考え、今何を重要視しなければならないのか、どれを優先させなければならないのかを、臨機応変に的確に判断すること。自国、他国の信頼を深め、どんな人(国)でも差別をせず、皆を平等に考えること。
  • 相手に、その交渉が有益なものだと思わせること。優秀な交渉人になるためには、相手が欲しているもの、相手の弱みをしっかりと分析し、それらと自分の利益とを照らし合わせて、交渉の内容を考えることが必要だと思う。
  • 交渉する全ての国に最低限の利益になる条件を与えること。私はこれを実践しようと交渉を頑張りましたが、やはりどの国にもとなるととても難しかったです。優秀な交渉人になるためには自分に少し不利な話が挙がってもムキにならず話を最後まで聴き、社会平和を第一に考えることができればなれると思います。私もこのような交渉人になりたいです。
  • 自分の利益だけを追求したり、無理難題を突きつけたりするのではなく、お互いにwin-winな状況になることを説明することです。実際、ある国に交渉をしに行ったとき、無理難題を突きつけられて呆れかけてしまいました。そして、その経験から自分の行動を見直すことができました。
  • 交渉を成立させるには、win-winの関係を認識させることが重要だと思う。
    それは、相手にとってだけいいことがある、というのもだめで、相手は絶対に自分に裏があると考えるだろう。そういうとき、「もしこうなったら自分にはこんないいことがある。相手はそのかわりにこういうことを求めている」と、相手に思わせれば、相手の目的がはっきりして、交渉が成立しやすくなるはずだ。
  • 交渉を成功させるには、自分がそれを行うことでどんな影響や責任が伴うのか、何が起こるのかなどをきちんと考えることだと思います。その上で、自分側に利益が出るようにうまく解決案を考えられればいいと思います。「優秀な交渉人」になるには、みんなを信頼しすぎず、自分で物事を判断できるようになることだと思います。

Q.ゲームの始まりから終わりまでを振り返ってみて、自分の考えや行動はどう変わっていきましたか?詳しく教えてください。
  • 自分はまず、武器商人としてお金のある国に武器を売って、その国が他の国と合併すれば平和になるのではないかと思いました。しかし、どの国も武力には頼らず、他の国と話し合いを重ねていて、少し暇でした。結果的にこちらもこうすればこの課題が解決できるのではないかと考え、とても充実した時間を過ごせました。やはり、世界平和には他国と平等に並び合える経済力・軍事力、そして話し合いが大事だと思います。 
  • はじめは他国の問題について関心がなく、自分の国だけの幸せを考えて行動していましたが、最後の方は平和について考え、他国の問題と自国の問題を解決できるように交渉しました。
  • ゲームの始めのときはあまり意見が出せなく他の人任せになってしまうことが多々ありました。しかし、ゲームが始まり慣れてきてからは自分から積極的に意見を出したり交渉に行ったりしていました。最後には他の人の解決しなければならない問題を手伝ったり一緒に考えたり他の人のために行動もできるようになったと思います。またどこかで戦争が起きてしまうのではと思っていましたが、ゲームが進んでいくに連れて戦争は必要なく国同士の話し合いだけで問題が解決できるのだなと思うようになりました。
  • 最初は戦争をしないと勝てないのではないかと思っていたけれど戦争をしなくても勝てるしもっと仲を良くすることができた。
  • 私は戦争をして解決しようと思いましたが、改めて家で考えてみると、戦争でいくらその問題が解決してももっと多くの問題が増え、悲惨になっていくだけだと考えました。
  • 最初は、自国のことだけを考えていた。どれくらい利益があるかなとか考えたり、多すぎる問題に対して自国のことしか頭になかったりしていた。ゲーム後半になって、自国の問題があらかた解決すると、ようやく視野が広がった。そして、地球溶解という問題・ピンチをチャンスにしようという、普段の自分では思いつかないであろうアイデアが浮かんだ。
    世界を統一し、権力を自分に集中させつつ、他の領地についてはそのまま元首相に任せたりして、世界を平和に導いた。結論「余裕、大事」。
  • ルール説明や世界の課題を聞いているときは内容が難しくて、何から取り掛かればいいのか分からなか ったのですが、先輩たちが指示してくれたお陰で、自分の役目を果たすことができたし、後半は積極的に行動することができていたと思います。
  • 途中からは、首相になったこともあり、周りの人と活発に意見を交換しあい、問題解決に向けて貢献できたと思います。自分の国だけが助かればそれでいいなどという考えを持っていると平和は実現できないと実感しました。周りにそのような考えを持っている人がいるため、クライシスレポートの問題はすべて解決したとしても新たな課題がうまれ、世界が本当に平和になったわけではないと思います。また、破壊工作員もいるため、あのままゲームが続いていたらどうなるかわからないと思いました。私は、みんなが協力すべきであるという考えは変わりませんでした。むしろ、協力することの重要性を改めて感じました。

Q.なぜ、あなたの考えや行動は変化したのでしょう?その原因について教えてください。 
  • 行動が積極的になったのは、周りの人がどんどん交渉に行っているのをみて刺激を受けたのと、問題がとても難しく、黙っていたら時間の無駄だと気づいたからだと思います。
  • ゲームでは、各国がどんどん同盟を結んで、資源を譲り合い、争いをやめていったため、このように問題を解決していくことができるのかと、実際に見て感じることができたから。
  • 周りの人たちが積極的に行動していて、自分もしたほうが良いと考えるようになったから。問題がたくさんある中、どんどん時間がなくなっていったから、自分も動かなければという気持ちになった。
  • ゲームが始まる前は自分の役職は、自由で何でもできる最高の役だと思っていましたが実際に役についてみるとそう簡単なものではないと痛感したからだと思います。自由だからこそ、責任が重いので一番しっかりしなくてはと思いました。
  • ゲームが進むにつれどこの国と友好な関係を築くのかなどを国の中で話し合って、領土権をめぐる問題でもなるべく穏便に解決できるように判断して行動しました。また、不本意ながら首相になったことで、なったからには責任を持って役割を果たそうという気持ちになったからというのもあると思います。
  • 周りの人の行動を見て、刺激を受けたから。クラスも混ざり、3年生とも関わり、物事に対しての積極性にとても感心したから。
  • 最初は自分がB国の首相を任され、自国が一番になるようになどと考えていたが、広い視野をもって物事を考えていく上で、どんなことも自分がやりたいことができるわけではない。やりたいこともたくさんあるが妥協しつつ、まわりと協力して取り組むのが一番の解決への近道だと思った。自分のやりたいことをするという近道よりも、周りが納得できるやり方というある意味の遠回り。遠回りこそが一番の近道だと気付いた。
  • 自分の立場上、周りを常に見て置かなければいけない役職だったため、各国の狙いについて自分の中で整理する力がついたからだと思います。終盤に向かうにつれ、状況把握にも慣れ、様々な事を考えられたから。

Q.ワールドピースゲームを終えた今、世界の問題を解決する上で、一番有効な方法は何だと思いますか? 
  • 今回、戦争をしなくても問題を全て解決できることを知ったから、現在世界で起こっている問題も、平等な話し合いを進めれば解決できるかもしれない。
  • 相手の国の話や考えを否定しないことだと思います。理解することが難しくても、否定することは戦争につながってしまうと思います。話をよく聞いて、自分の都合だけを考えることはせず、相手の都合も考えることが大事だと思いました。
  • 互いの国と話し合うこと。ゲームをする中で交渉は一番難しく有効なものだなと感じました。武器を買 って攻撃することは簡単だけど、それによって環境破壊や人が亡くなったりすると社会平和ではなくなってしまいます。交渉は誰も傷つかず、お互いに納得がいくと思います。しかし納得がいくためには様々な条件をつくったり、互いに譲ったりしなければならなく、とても難しいものだと思います。だからこそ、交渉は世界を解決する上で一番有効なのだと思います。
  • 相手がどんなことを求めているのかを理解すること、その要望に答えるためにあらゆる可能性を考えて、自分にどこまでできるのか考えて、それを相手にどうやって伝え、納得してもらえるのかを探求すること。
  • すべての国が世界平和の実現に向けて動き、利益を譲り合うこと。また、多くの人が同時に利益を得るような問題の解決策を考えること。
  • 一旦冷静になって周りを見渡し、状況を整理することが大切だと思います。それぞれの国ごとにたくさんの問題を抱えているのは現実でもゲームの中でも同じでした。それをいかに穏便に解決するのかと深く考えることで、武力の撤退に繋がったり、同盟を組んだりできたのだと思います。一人の意見だけでなく、メンバー内の考えも集約しつつ、今立たされている状況に対して冷静に対応したことが解決に繋がった理由だと思います。
  • 色んな国できちんと話し合うこと。なんでもかんでも武力で制圧して弾圧して問題をかき消すのではなく、面倒くさくても一から向き合って話して根本から解決したり条約を結んだりすること。今まであった歴史をちゃんと勉強して学ぶこと。
  • ゲームをする前から、戦争は解決につながるものではないと思っていましたが、今回のゲームを通してさらにそう思いました。世界で様々な種類の問題がある中で、それをすべて、誰もが納得の行く形で解決するのは正直難しいことだと思います。だからといって戦争で、痛めつけて事を進めるのではなく、全員平等、公平に話し合いを何度も重ねて、少しずつでも解決に向かっていけるといいなと思います。
  • たくさんの時間をかけ、話し合いをすべきだと思う。無理に解決しようとすると逆にこじれてしまうこともあると思ったから。あまり時間をかけられないような問題のときは、やはり困った時はお互い様の精神で助け合うべきだと思う。
  • 一番有効な方法は、問題の解決案の計画をきちんと練った上で、どうすれば効率よくなるか、これを行うことでどのような影響が出るのかなど、常に先のことを考えて、目先の利益などにとらわれないようにすることだと思います。また、ある問題が解決したとしても、新たな問題が生まれ、世界にある全ての問題が解決するということはないため、粘り強く課題解決に取り組み、最も悪影響が少ない方法を考えることが重要だと思います。
  • みんなを引き付ける案を考え、大人数で話し合うと時間を多く使ってしまうから、グループで各国に分かれて、時短して多くの案を出し、最終的にそれをグループの代表が集まって出た案を出し合い、話し合えばいいと思う。


 ワールドピースゲームに参加した生徒たちは、日々報道されているような世界の諸問題や紛争を解決するために必要な対応を講じながら、如何にして平和な世界を構築するかを考えてきました。世界の主要な指導者はもちろん、世界中の人々がこのような考えを持てば、世界平和(ワールドピース)がきっと訪れるものと思います。
 同時に、一人だけでは生きていけない私たちは、学年・学級、友人関係、家族など、人間関係のあらゆる場面で同様の考えを持つことが互いの友好関係を平和な形で構築・維持していくために必要なことだと気付き、いじめ・嫌がらせやハラスメントのようなことのない世界を構築できる人格として成長していくことを願っています。