第3回サイエンス・コ・ラボ 2021
分子のキラリティ(対掌性)の性質を
実際に確かめてみよう
日時 | 2021年12月11日(土) |
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場所 | 宮城野校舎 中講義室 |
参加生徒 | 仙台育英 特別進学コース 秀光コース1年生・2年生(希望者) |
講師 | 東北大学高度教養教育・学生支援機構 小俣乾二 助教 |
今年度の最終回となる第3回目のテーマは、『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』。東北大学高度教養教育・学生支援機構の助教である小俣乾二先生に指導をしていただきました。
小俣先生から花や魚など身近にあるキラリティについてのお話から始まり、生徒自身が分子模型を組み立てながら対掌性について理解しました。またキラリティな性質を持つ分子が、光の角度を変える性質(旋光性)を持っていることを確かめるために手作りの旋光計を作りました。
実験の様子
第3回「分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験」
手のひらを自分のほうに向けたまま、同じ指の配置になるように右手と左手を重ね合わせることはできませんが、右手を鏡に映すと左手の指の配置と同じになります。このことを化学の言葉で「互いに鏡像関係にある」あるいは「対掌性を持つ」 といい、互いにその状態にあることを『キラリティ』または『キラル』な状態にあると呼びます。
化合物の中には、化学式が同じでもこうした鏡像関係にある2種類の原子配置に分かれるものがありますが、私たちの体をつくる生体分子は両者をしっかりと区別します。たとえば、両方の型を混合したアミノ酸の中に酵母菌を入れると、酵母菌は左型だけを利用して発酵を行います。ちなみに生体内のアミノ酸はすべて左型、遺伝子であるDNAを構成するデオキシリボースはすべて右型です。この「右型」「左型」を判定するには、化学的な性質が全く同じであるために、その物質の化合物に光を当てたときに光が示す『旋光性』という物理的な性質の違いを用います。光は電磁波という波ですが、波には振動する方向があります。たとえば水面を伝わる波は上下に振動(前後にも振動)しているわけですが、光の場合にはこの振動する方向が、物質によってはそれを通過すると回転する性質があり、これを旋光性というのです。
今回の実験講座では、このキラリティによる物質の持つ旋光性の違いを測定してみました。オレンジの皮からしぼりとった2種類のキラルなリモネンでは、マーブルチョコレートのケースで各班ごとに作った(!)旋光計を用いると、旋光計に取り付けた偏光板を通過して一方向に偏光させた光の振動方向は、ケースの中の試験管に入れた2種リモネンを通過したのちに、それぞれで逆向きにほぼ同じ角度だけ回転していることが確認できました。そして講義では自然界の花の付き方の話、隕石中に含まれる物質のキラリティを分析することから、私たち地球上の生命は「宇宙からもたらされた可能性が否定できない」との考察にまで話は広がっていきました。