第6回サイエンス・コ・ラボ 2023
自然の中にある
放射線の飛跡を観察しよう
『霧箱を用いた自然放射線の観察』
日時 | 2023年12月9日(土) |
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場所 | 宮城野校舎 大会議室 |
参加生徒 | 仙台育英 特別進学コースおよび秀光コース1・2年生(希望者) |
講師 | 東北大学名誉教授 関根勉先生 |
東北大学をはじめとする専門の先生方からの指導を受けることができる、理科の実験講座「サイエンス・コ・ラボ」が、今年は全6回実施されました。今年度最後の第6回目は『霧箱を用いた自然放射線の観察』がテーマです。東北大学名誉教授の関根勉先生にご指導いただき、放射線とはどういうものかを学びながら、実際に“放射線の軌跡を見る”体験をしました。2人1組で班になって手のひらサイズの霧箱を作り、LEDライトで照らしてみると…。霧箱の中に放射線の飛跡が肉眼でも見える形でハッキリと浮かび上がってきます。生徒たちは動画や写真に写しながら、夢中になって観察していました。
実験の様子
第6回「霧箱を用いた自然放射線の観察」
自然界に存在する物質の中には、放射線を出しているものがあります。放射性物質が持っている放射線を出す能力を「放射能」とよびます。この実験講座での狙いの1つに、各々が操作する簡易『霧箱』での放射線の飛跡の観察があります。霧箱は放射線の飛跡を観察するポピュラーな装置で、市販品は高価ですがその構造は単純なものです。今回も大学で製作した簡易霧箱を準備していただきました。作業は、霧箱内上部に取り付けたスポンジにエタノールを染み込ませた後ラップで封をして、大気中の放射性物質(気体ラドン)を吸着させた「ろ紙」の切れ端を放射線源として内部にセットし、板状のドライアイスに乗せて霧箱を冷やします。これにより霧箱上部と下部での温度差により上下の温度勾配ができることで、下部にでは気化したエタノールの過飽和状態を作りだすのです。そこに線源から放射線であるα線(放射性物質の原子核が壊れるときに飛び出してくる核の破片=ヘリウム原子核の流れ)、β線(壊れた放射性物質の原子核が安定するために核の中性子から出てくる高速の電子)が通過すると、電気力で引かれて集まったエタノール分子が結合して、それぞれが飛んでいく飛跡にエタノールのコロイド粒子からなる飛行機雲ができることにより、懐中電灯で照らすライトの中に浮かび上がるのです。またα線がろ紙の反対側からでないことで、紙1枚でα線が遮蔽される様子も確認できました。部屋を暗くして初めて観る光景に神秘的な感じを覚えた生徒も少なくなかったことでしょう。生徒全員が手元での観察に成功し、時間の過ぎるのも忘れ見とれていた様子が印象的でした。さらに大学から持ち込んでいただいた大型の霧箱に、部屋の空気を入れただけで線源を特別に入れてないのにもかかわらず、自然放射線が大型霧箱内の至る所で直線的に飛ぶ様子 - α線はもちろん、細いひょろひょろしたβ線の飛跡までがはっきり観察され、次第に線量が減少していく様子も確認できました。私たちは普段からこうした放射線を浴びているのだということを、まさに“観て”知ることができたわけです。その後、班ごとに箱に入った多数のサイコロをよく振った後、出た特定の目の個数を数えそれを取り出してから残りのサイコロを振る、これを繰り返すことで、放射線がどのような自然の法則に従って次第に減少していくのかをグラフを描きながら考察しました。特に震災後、福島の原発事故による被災の様子や風評被害などの報道により、これまで漠然と危険なものだと思っていた放射線について、本年度もそれを正しく判断できるかなり専門的な知識を得ることができた非常に有意義でかつ興味深い実験講座となりました。