仙台育英学園高等学校 秀光コース 第24期生 卒業証書授与式
秀光の強い絆は
卒業後も続いていきます
式では、加藤雄彦理事長・校長先生から卒業生代表に卒業証書が手渡され、続いて、精励賞、加藤利吉成績優等賞各賞の受賞者が発表されました。そして、秀光生としての活躍を讃える『秀光グランプリ』には久保さん、永井さん、中松さんが選ばれ、校長先生から一人一人に賞状と楯が贈られました。
卒業証書授与式のあとは、仙台育英学園の同窓会への入会式が行われ、同窓会から記念品が贈呈されました。
そして最後のホームルームでは、仲間や先生方と秀光での思い出を振り返りました。24期生と秀光との強い絆はこれからも変わらず続いていきます。
秀光グランプリ 受賞者 表彰内容(原文のまま)
『Exemplary Leader Award』
久保さん(宮城教育大学附属中出身)
またCanada Global Leadership Academyでは実行委員長として優れたリーダーシップを発揮し、中学3年生から高校2年生までの生徒をよくまとめました。
周囲への思いやりを欠かさない人柄と、妥協を許さず信念と責任を持って取り組む姿勢は、学年を超えて多くの生徒から慕われ尊敬を集めました。
何事においても真摯に取り組み、他者のために力を尽くしたことは称賛に値します。ここに仙台育英学園の生活信条7か条、IBの学習者像を体現したことを讃え「Exemplary Leader Award」を授与します。
『Brilliant Learner Award』
永井さん(秀光中出身)
またDiploma Programmeの学習に誰よりも意欲的に取り組んだほか、同級生と協力してDPの説明会や進路相談会を企画・実施するなど、後輩のために尽力しました。学業面でも努力を惜しまず、2・3年生、高校1年生では加藤利吉成績優等賞を受賞するなど、常に上位の成績を維持しました。
日々の学習では積極的に発言して議論をリードし、仲間と切磋琢磨するとともに、将来の目標のもと勉学に励むことでDiplomaを取得することができました。
6年間にわたってひたむきに努力を重ね、責務を全うした姿は、秀光生の模範となるものであり称賛に値します。ここに仙台育英学園の生活信条7か条IBの学習者像を体現したことを讃え「Brilliant Learner Award」を授与します。
『Intercultural Ambassador Award』
中松さん(折立中出身)
校長先生からの式辞【一部抜粋】
今回の秀光グランプリの受賞者には共通した 1 つの単語があります。それは、「リーダーシップ」です。リーダーシップというのは、グループや組織をまとめていくことですが、その中で私は 1番最初に必要なのは「適応力」だと思います。それは目まぐるしく変わる世の中であってもその変化を柔軟に受け入れるということです。そしてその社会を冷静に分析し、グループや組織にとって何が有益かを考えられる力も必要です。さらにグループを積極的なパートナーシップで囲んでいく。小さなグループでもそれが得られればその力は大きくなります。
皆さんの活躍はここに一緒に座っている後輩たちが必ず見ています。後輩たちに見習ってもらえるような 24 期生になってください。秀光の卒業生たちは日本や世界中で大活躍し、秀光のネットワークを通じて、新しいパートナーシップを作ることができています。1人の力でもそれを合わせていけば大きな力になります。そこに至誠の部分があって、自分の気持ちを誠実に伝えることができれば、さらにそのことによって必ず社会を変えていくことができるはずです。皆さん、これからもどうぞ健康で頑張ってください。卒業おめでとう。
送辞【一部抜粋】
在校生代表 秀光コース2年 武山さん(秀光中出身)答辞【全文】
卒業生代表 永井さん(秀光中出身)
「残り少ない高校生活の帰り道を大切にしてくださいね」。西門を抜け、冬の寒さで葉を落とした銀杏の傍を歩く私たちの残りの日々は、担任の先生の一言で特別なものになりました。
大寒の厳しい寒さを越え、春の訪れを肌で感じながら桜に目を向けると、その枝には桃色の小さな芽が僅かに綻びはじめているのが見られます。例年ならば胸が高鳴るこの光景にも、別れの寂しさが募ります。万葉集に収められた大伴池主の一首──「桜花 今ぞ盛りと 人は言えど 我は寂しも 君としあらねば」。この歌がもつ寂寥の感は、まさに私たち卒業生の心境に重なっているように思えます。私たちは春が訪れるたびに、南門の桜の下で集合写真を撮影してきました。しかし、今日を境にそれぞれの進学先へと歩み出す私たちは、次に桜が満開を迎える頃には、かつてのように一堂に会して写真に収まることは叶わなくなるという現実に、一抹の寂しさを覚えます。
それでも、寒くも徐々に暖かさを取り戻しつつある今日の空気は、私たちが仙台育英学園の門を叩いたあの日の、緊張と希望とが入り混じった感情を思い起こさせてくれます。
私たちの学園生活最後の一日を美しく飾り、そして新たな日々への期待に胸を膨らませてくれる今日という佳き日に、私たち仙台育英学園高等学校 秀光コース24期生、24名は卒業します。
先ほどは、校長先生のご式辞をはじめ、父母教師会会長様からのお祝いの言葉、在校生のからの送辞をいただきましたこと、卒業生を代表して心より感謝申し上げます。
私たち24期生の歴史は、明るい木の色が優しく包み込むこのゼルコバホールでの入学式から始まりました。杜の都・仙台に位置する宮城野校舎、その傍に聳える銀杏、春を彩る桜、そして欅を思わせるこの場所で、私たちは学園生活の幕を開けました。振り返れば、いつも私たちの学園生活には樹木が寄り添っていたように思います。
中学1年生のグリーンスクールで皆が向かったのは、樹木の緑が深き蔵王と会津。初めは会話も弾まなかった仲間たちとも、自主研修やトレッキングを通じて徐々に打ち解けていき、やがて私たちの絆は根を深く張っていきました。初めての秀光での学園生活は瞬く間に過ぎ去っていく、心躍るものでした。
しかし、新型コロナウイルスという脅威が、対面授業、友人との語らい、行事──当たり前のように享受していたものを奪い、私たちの幸せな学園生活に大きな陰を射しました。そのような中でも、オンライン授業で画面越しに頷きながら先生の話を聞く友人たちの姿はどれほど心強かったことでしょう。──自粛期間が明け、私たちという樹木が一層成長した時、学園全体に晴れ渡る光が再び戻ってきたことを今でも覚えています。
私たち24期生は、37名で秀光中学校に入学しましたが、3年の間に自分の目標や夢と向き合った末、他のコースへの進学を決意した友人たちもいました。私たちは秀光中学校という一つの幹から徐々に各々の枝葉を伸ばし始めたのです。それらは決して容易な決断ではなかったと察します。その姿勢は、春から秀光コースで学習に励もうとする私たちにとって、大きな契機を与えてくれました。別離は寂しさを募らせましたが、同時に私たちを高校生活へと力強く後押ししてくれました。
高校1年次には新たに3名の仲間が加わりました。3年を共にしてきた者と、新たに出会った者の間で、すぐに信頼と一体感を築くことは決して容易なものではなく、初めは互いの間に見えない防風林を感じていたことでしょう。しかし、新たな仲間の存在が私たちに刺激を与え、スポーツチャレンジでの創作ダンス、授業、休み時間での交流を重ねていくことで、次第に深まった絆が形に現れた、秀光祭での三味線合奏は今でも忘れられません。15名が息を合わせ、一つの音色を奏でるという体験が私たちの幹をより太いものにしてくれました。
そして冬になると、外国語コースからさらに三人の仲間が加わり、ともにDPに挑戦する同士として、クラスの一体感を高めました。DPへの挑戦に際して、先輩方に見せていただいたIBの分厚い教科書や、自分たちが執筆したものとは比較にならないほど質の高いレポート──そういったものに憧れを抱き、私たちのIBへの熱意が、学びへの貪欲さが段々と高まっていきました。クラス内で交されるDPに関する会話からは、学びと真摯に向き合う私たちの情熱と、新たな課題に果敢に挑む強い志が芽吹くのを感じました。
しかし、DPのカリキュラムは決して甘いものではなく、想像していた以上の課題量とその難易度の高さに驚かされました。課題に悩み、家に帰ってもなお課題のことを考え、気づけば深夜12時を回る。家族はすでに眠りにつき、静まり返った家の中で、机の周りだけが光に照らされていた夜を皆経験したことでしょう。自分ならもっとできるのに、そう思っても時は進んでいく。秀光24期生にとってDPは試練だったと言えます。それでも、DPは苦労ばかりではありませんでした。ELDPとDLDPの生徒が初めて共同で参加したIBキャンプや、コロナ禍で延期されていましたが校長先生の計らいによって実現した念願のカナダ研修など、いまもなお思い出話に花が咲く素敵な行事が沢山ありました。写真のフォルダを振り返れば、そこには日々の課題から解放されたような弾けた笑みが無数に広がっています。──アメリカの実業家サミュエル・ウルマンは自身の詩の中で「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を云う。…たくましい意志、ゆたかな想像力、燃える情熱をさす…」と述べていますが、まさにDPに挑戦した私たちの日々こそ、彼の指す青春そのものであったのではないでしょうか。自分の目の前にある高い壁をなんとか乗り越えようと気を張り、思索を巡らせた瞬間に、或いは学校から離れた場所で友人たちと思い出を紡いだ瞬間に、「意志・想像力・情熱」は確かに息づいていました。そのとき、我々はそれを「青春」とは気づかずとも、一つひとつの出来事が私たちの中に青春として刻み込まれていたと言えるやもしれません。その証拠に、卒業間際の3M1では、休み時間や昼食時、下校時、時に自習時間さえ、友人たちとの写真を眺めては、思い出話に耽ってきました。この日々は、私たちの枝葉にそっと綺麗な花を宿してくれていました。
そして2024年4月、秀光24期生は新たにELDPの生徒6名を迎え、いよいよ「受験生」となりました。学年が上がる度にクラスのメンバーが増え、クラスの形を変え続けてきた私たちですが、共に過ごしてきた時間は異なっていても、共通項である「受験生」という立場が、大学進学へ向かう仲間としての結束力を高めました。しかし、受験は決して易しい通過点ではありません。しばしば残酷な現実を突きつけ、高校入学時に思い描いた目標を志半ばで断念せざるを得ない瞬間もありました。受験は佳境を迎えると、同じ教室で学んだ仲間の中にも、成功に歓喜する者と、自分の行先に焦燥を抱くものを生みました。──合格発表の日はその人にとっては特別であっても、他のクラスメイトにとっては何気ない一日でした。結果が振るわず、心の内に翳りを抱えた者が、何気ない日を進んでいくクラスメイトの前では気丈に振る舞っていた姿を思い返すだけで、今も胸が苦しくなります。私たちのために料理や洗濯、あらゆるサポートをしてくれた家族に、私たちのために何時間も指導に時間を割いてくださった先生方に、「不合格」と云う三文字が、どれほど申し訳が立たなかったことでしょう。──だからこそ、自分以上に一喜一憂してくれる家族の優しさや、もう一歩踏み出す力を与えてくれる先生方の支え、辛い時に励ましてくれる友人の存在が、私たちにとってかけがえのない財産になりました。仲間たちが次々と進学先を決める中で、自分の進学先が決まらない期間。そういった長きにわたる苦難と忍耐を乗り越えて、漸く勝ち得た「合格」という二文字は、単なる喜ばしい結果などではなく、自分自身の努力の証として何よりも輝かしいものでした。もし、この受験を経験していなければ、私たちはきっとその宝物の価値に気づけなかったことでしょう。成人という人生の大きな節目に、こんなにも濃密な経験を積めたことは、大変貴重だったと感じています。そして、この受験期に得た学びは、これからさらに伸びていく私たちを、いつまでも成長させ続けてくれる土壌であるはずです。
こうして秀光コースで過ごした日々を一つひとつ振り返ると、やはりそこには常に家族と先生方の支えがあったことを改めて実感します。特に、成績が思うように上がらない不安と焦燥とが溢れ、誰かを頼りたくなったとき、家族や先生方は常に寄り添う場となって、私たちを温かく見守ってくださいました。これまで揺るぎない土台となり私たちを支えてくださったみなさま。今、私たちはさらなる高みへと歩みを進めようとしています。まだ若木にすぎない私たちですが、いずれは大きく枝を広げ、周囲に豊かな恵みをもたらす存在へと成長していきます。今後は私たちが皆様の支えとなる大樹へと成長していくことをここに誓います。──非常に酷な受験生活を家族と先生方が支えてくださり、家族や先生方への感謝は、24期生24名の数だけ存在し、ともすれば私の想像を遥かに越えるものでしょう。それを私がこの場で代わって話すのは、実に烏滸がましいことのように感じます。ですから、この卒業式が閉式した後、24期生それぞれが自分の言葉で先生方、そして家族に想い思いの感謝を伝えるはずです。その時の言葉を、想いを、全身で受け止めていただければ幸いです。
そして、後輩の皆さん。皆さんは秀光で日々の課題をやり遂げる中で、自身の限界が少しずつ押し広げられていることを実感する瞬間はあるでしょうか。春先には苦労した課題の量も、年度末に同じ量を与えられてもなんてことはない──そんな経験、一度はあるのではないかと思います。私が秀光中学校・秀光コースに入学して最も感動したことを挙げるならば、「自分って本当はこんなにできるものだったのか」と、短期間で何度も自分の成長を実感できた瞬間でした。それは、いくつもに連なった壁が存在して初めて得られるものなのかもしれません。私を含め、人は誰しもできれば楽な道を選びたくなるものですが、IBのカリキュラムは私たちにそれを許しません。しかし、それこそが実は幸せなことであり、私たちを大きく成長させるのだと考えています。ここで、私が高校二年次に出会い、受験期に特に心に刻んだ言葉の一つを後輩の皆さんに贈らせてください。──マタイによる福音書7章より「狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。しかし、命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない。」──この先、皆さんの歩む先には高校受験やPersonal Project、DP、大学受験など、幾度となく感ぜられる狭き門が必ずあります。しかし、狭く険しい道を学生のうちに歩むことこそ、大きな成長・成功へと繋がるものだと私は確信しております。卒業後も、幾つもの壁を乗り越えた皆さんの輝かしい活躍を楽しみに待っております。
わずか数年の間に、生成系AIの台頭によって、かねてより求められてきたネットリテラシーも意味をなさないほどネット空間は先行きの見えにくいものへと化しています。こうした情報社会では、個々が扇情主義のために、人々が協力する姿勢は依然として希薄なままのように感じられます。グローバル規模の諸問題を抱える我々にとって、「協力」とはそれほど困難を極めるようなものであり、理想論なのでしょうか。
私たち24期生は幾度となく変化するクラスの形と向き合い、その度にお互いの理解を深め、友情を築いてきました。「協力関係」とは私たちのIBの学びで必要不可欠な要素であり、決して特別なものではありません。これから私たちが立つ社会の前線で、協力を忘れないでいたい。樹木が根を張り、土砂を皆で食い止めるように、協力関係の先にある支えとなる存在でありたい。我々ならば、決して困難なことではないはずです。
それも全ては、仙台育英学園の「至誠・質実剛健・自治進取」の建学の精神、そして秀光で培ったIBの学習者像が私たちを後押ししてくれるはずです。私たちは国際社会の中で他者と協力し、貢献していくことを誓います。
結びとなりますが、仙台育英学園の更なるご発展と、校長先生をはじめとする皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げ、答辞といたします。