第7回サイエンス・コ・ラボ 2019
手作りの旋光計を使って
“キラリティを持つ分子の性質”を実際に確かめてみよう
『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』
日時 | 2019年12月7日(土) |
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場所 | 宮城野校舎 化学実験室 |
参加生徒 | 仙台育英 特別進学コース 秀光コース1年生・2年生(希望者) |
講師 | 東北大学高度教養教育・学生支援機構 小俣乾二 助教 TA(ティーチングアシスタント)の皆さん |
東北大学から各分野の専門の先生方をお招きし、直接実験・指導を受けることができる全7回の理科の実験講座「サイエンス・コ・ラボ」。2019年度の最終回となる第7回目は、東北大学高度教養教育・学生支援機構の小俣乾二先生から『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』についてご指導いただきました。はじめに小俣先生から「キラリティ(対掌性)とは、人間の右手と左手の関係のように形を重ね合わせることができず(両手のひらを平面に置いて、上下で重ねた状態)、そのものを鏡に写したときの鏡像が同一ではない(右手を鏡に映すと鏡像は左手になる)性質のことです」と説明があり、生徒自身で分子模型を組み立てながら対掌性について理解しました。さらにキラリティを持つ分子の中には、光の角度を変える性質(旋光性)を持っているものがあることを確かめるため、手作りの旋光計を作りました。
実験の様子
第7回『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』
手のひらを自分のほうに向けたまま、同じ指の配置になるように右手と左手を重ね合わせることはできませんが、右手を鏡に映すと左手の指の配置と同じになります。このことを化学の言葉で「互いに鏡像関係にある」あるいは「対掌性を持つ」 といい、互いにその状態にあることを『キラリティ』または『キラル』な状態にあると呼びます。
化合物の中には、化学式が同じでもこうした鏡像関係にある2種類の原子配置に分かれるものがありますが、私たちの体をつくる生体分子は両者をしっかりと区別します。たとえば、両方の型を混合したアミノ酸の中に酵母菌を入れると、酵母菌は左型だけを利用して発酵を行います。ちなみに生体内のアミノ酸はすべて左型、遺伝子であるDNAを構成するデオキシリボースはすべて右型です。この「右型」「左型」を判定するには、その物質の化合物に光を当てたときに光が示す『旋光性』という性質を使います。光は電磁波という波ですが、波には振動する方向があります。たとえば水面を伝わる波は上下に振動(前後にも振動)しているわけですが、光の場合にはこの振動する方向が、物質によってはそれを通過すると回転する性質があり、これを旋光性というのです。
今回の実験講座では、このキラリティによる旋光性の違いを測定してみました。オレンジの皮からしぼりとった2種類のキラルなリモネンでは、マーブルチョコレートのケースで各自が作った(!)旋光計による角度の測定から、光の振動方向はそれぞれで逆向きに回転していることが確認できました。そして講義では自然界の花の付き方の話、隕石中に含まれる物質のキラリティを分析することから、私たち地球上の生命は「宇宙からもたらされた可能性が否定できない」との考察にまで話は広がっていきました。