『宮城野萩だより』Vol.3  -Top News-
九十八年の歳月を経て
学園創立者・加藤利吉先生の
理想を実現
東北初、中高一貫教育の
秀光中等教育学校が誕生
 

 1996年に誕生した仙台育英学園秀光中学校が、今年4月、東北で初めての中・高6年間一貫教育の秀光中等教育学校として生まれ変わりました。4月5日、多賀城校舎グローリーホールで挙行された開校式・入学式での加藤雄彦校長先生の式辞を紹介しましょう。

 全国で10番目の中等教育学校として秀光中等教育学校を開校することができますことをみなさんとともに祝い、またこれまで秀光中等教育学校の設立に向けてご支援・ご援助賜りました宮城県、多賀城市の関係者、6万余の同窓生、学園関係者に対して心より感謝申しあげます。

 2005年10月1日に創立100年をむかえる仙台育英学園にとって、中等教育学校の設立は開学以来の悲願であり、創立者加藤利吉先生のつくられた建学精神「至誠・質実剛健・自治進取」を実践する上で最も理想の教育形態であると信じております。98年間かけて理想を現実にできたことを創立者加藤利吉先生とともによろこびたいと思います。

 入学許可を受けた秀光8期生は中等教育学校と改編された学校の初めての新入生として新たなる歴史を築かれ、その6年間の学園生活をより充実した、良き青春の思い出となるよう先輩たち、そして今後入ってくる後輩たちとともに力を合わせ、一歩一歩、歩んで行かれることを期待します。

 保護者の皆さんにはお子様の入学をどれほど喜ばれているか私にはよくわかります。4人の子供の父親として子供の成長は何よりもうれしく、楽しみであることを知っているからです。皆さんのお子様がたくましく、人間性あふれる良き人間として成長していくためには、学校での勉強や友達との信頼関係を築いていくだけでは十分とはいえません。家庭での子供に注がれる確かな愛情があってこそ、「自分は家庭でも学校でも受け入れられている」と強く感じ、自らの生きる力を養っていくものと考えています。どうぞ、お子様の独立していく姿を期待して、ともに努力していこうではありませんか。

 現代社会はいま混迷の時代に入ったように思えます。たとえば、イラク戦争は、超大国アメリカが第二次世界大戦を契機に創設された、国連・安全保障理事会の機能を脅かす状況を生み出したと言えましょう。この悲惨な両国の争い、多くの人々を殺傷する爆薬を発明したのは、スウェーデン人のアルフレッド・ノーベル氏です。彼は、ニトログリセリンから新火薬を生み、より強力で完璧なダイナマイトの発明をし、巨万の富を得たことからノーベル賞が始まりました。ノーベル氏は終生、科学の進歩と世界平和の融合を願い、20世紀の幕開けである1901年彼の遺志により、化学、物理学、生理学、医学の科学領域と、「文学と平和」の5分野から優秀者を世界中から選び、毎年その功績を称えてきました。氏が残した巨万の富はノーベル賞として将来も永く人類の幸せのために貢献し続けるでしょう。

 平和利用としてニトログリセリンが心臓血管拡張剤として使われたり、開発プロジェクトで平和的に利用される一方、多くの罪の無い市民や命令によって闘わなければならない兵士の命を奪うという戦時利用もあることをノーベル氏は大変悩んだのです。彼の憂いは21世紀の現在においてもイラク戦争をはじめ、多くの国や地域で実際に続いています。人類のためになると信じて発明されたものが、悪いことに使われることを歴史から我々は学んでいかなければなりません。

 秀光生は加藤利吉先生の言われる「至誠」の実践を通じてノーベル氏が生涯悩まなければならなかったことが社会で再び起こらないよう正しい教養を身につけ、その知識が人を傷つけるためではなく、人をさげすむためではなく、人類の発展と恒久平和のために利用できる人間としての正しい道を歩んで行かれるよう期待いたします。

   
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