5月22日の事故を目の当たりに体験した特別 進学コース1年・木村直人君が、「自動車事故の防止について考える」をテーマにした作文をつづり、日本損害保険協会の高校生「くらしの安全・くらしの安心」作文コンクールで最高賞の文部科学相奨励賞を受賞しました。
 選ばれたのは全国から約1万6000点の応募があった中から。作品は「事故の衝撃を乗り越え、独自の視点で再発防止を提案した」(協会・河北新報の記事より)と最高の評価を受けました。
 下に、木村君の作文の全文を紹介します

 
「三人の友達の命を未来に生かすために」
ー自動車事故の防止について考えるー

仙台育英学園高等学校 一年 木村直人


 今年(平成17年)5月22日午前4時、僕たち一年生は学年行事のウォークラリーに参加するため校舎を出発した。僕たち30人が最初のグループで、続いて各グループごとに次々と約23キロ先にある東松島市の研修施設に向かって歩き始めた。学校を出発してから10分ほど過ぎた頃、僕たちは幅の広い国道4号線の横断歩道を渡り始めた。横断歩道を渡る時、何人もの先生方が「横断中」という大きなプラカードを掲げ僕たちの横断を誘導していた。僕たちが渡り終えると横断歩道の信号が赤に変わった。

 1分ほど過ぎ、横断歩道の信号が青に変わり、次のグループが横断歩道を渡ってくるのが見えた。それからほんの数秒もたたないうちに突然、「ドスーン」という鈍い音が聞こえた。僕はトラックから荷物か何かが道路上に落ちたような音だと思った。同時に大きな悲鳴が聞こえた。ふりかえると、大きなワゴン車が横断歩道脇にぶつかるように止まろうとしているのが見えた。「事故だ」と思った。周囲から大きな悲鳴や叫び声が聞こえた。

 「戻れ、戻れ」という先生の声に横断歩道を戻り始めると、渡っている歩道から10数メートル離れた路上で「大(はじめ)、起きろ、大(はじめ)、起きろ」という先生の大きな叫び声が聞こえた。道路の上には何人もの同級生がバタバタを横たわるように倒れていた。

 一瞬の出来事で、何がなんだかわからなくなってしまった。数秒後、僕は、とても大きな自動車事故に遭遇したのだと気づいた。

 加害車両の車の運転手らしい若い男の人が大きな声でわめいていた。周囲にいた友達が「あの運転手、切れている」と言った。友達が次々に携帯電話を使って家に電話をしていた。

 この事故で3人の友達が亡くなった。斎藤大(はじめ)君、三澤明音(あかね)さん、細井恵さんの三人だ。

 ほかに4人が重傷、さらに生徒16人と先生2人が負傷した。事故後、NHKなどのテレビ局や翌日の全国紙はすべてトップニュースだった。その後、しばらくの間、臨時休校となったため、担任の先生から家に何度も電話が来た。事故を目撃していたため、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にならないかと心配していたからだ。

 実際、友達の中には、事故の報告を聞いたショックで倒れ救急車で運ばれた人や精神科医のケアを受けた人もいる。あのいまわしい事故から4ヵ月が過ぎた。事故が起きて、尊い友達3人の命が失われた事実をしっかりと胸に刻み、その死をこれからの未来に生かすことが僕に与えられた使命のような気がする。

 僕は、事故のあと「事故を起こさない車」「死傷者を出さない車」について考えてみた。たとえば、僕たちが遭遇した事故は、酒酔いによる「居眠り運転」が原因だ。このような事故を防止するには、居眠りをした時に車を自動的に停止させる車を開発することだ。実際、自動車会社の車の新車開発についての取り組みを調べてみると運転手の「まぶた」の動きを赤外線カメラで感知し、居眠り状態のまぶたとなった場合、車に内蔵したコンピュータが判断し警報音を鳴らすシステムを開発していることがわかった。来年春に発売予定でレクサス「GS450」という。

 自動車会社は、「ぶつからない・けがをさせない」をコンセプトに新しい車を開発中だ。

 僕たちが遭遇した悲惨な事故を防止する安全な車が一日も早く世に出るよう願っている。

 次に僕が取り組んだのは自動車保険だ。

 僕は今度の事故をきっかけに自動車保険のことを考えた。理由は、僕たちが遭遇した事故の加害者は「自動車保険」に加入していないため十分な補償を受けられないことを知っていたからだ。このため、学校全体で募金活動を実施した。そこで、僕は、未来の自動車の保険のことを考えてみた。今は、任意の自動車に加入しなくても車を運転することができる。

 未来の社会ではそれができないような社会的な仕組みを作るべきだ。つまり、保険に加入していない自動車にはロックがかかり、エンジンがかからないような仕組みにするのだ。

 自動車のカギの中に保険の加入情報を入れておいたり、あるいは免許証の中にICタグチップをいれて保険の加入情報を入れ保険に加入していない、あるいは期限切れの場合には、車を運転することができなくなるようにするのだ。お財布ケータイのように、携帯電話の中に車の保険情報を入れ、もし保険が切れている場合、携帯電話で決済が完了することができるようにするのもいいと思う。保険に加入していない自動車は、自動車のエンジンがかからないようにすることで、万一の事故の場合の補償が万全になるようにするのだ。

 事故のリスクを考えた場合、エンジンをかからないような仕組みにした方がいい。

 でも、なかには、納入を忘れている場合もあると思う。その場合には、近くのコンビニなどで簡単に支払うことができるようにする。

 その仕組みは簡単だ。コンビニには多機能の支払い機能を持つ端末が置いてある。

 その端末から自動車保険料を簡単に支払うことができるようにするのだ。たとえば、その端末から自動車の車両番号を入力することにより、保険の種類、支払い状況がわかるようにし、もし、保険が切れている場合、そこで簡単に支払いをすることができるようにするというものだ。保険に未加入なら、保険会社を選択する機能の画面 に移り、保険の安い順に並べたりして運転手が自由に保険会社の保険を選ぶことができるようにする。

 郵便小包がコンビニから発送できる時代なのだから、自動車保険もコンビニで加入したり支払いをしたりすることができる方が保険加入者の増大にもつながると思う。いつでもどこでも24時間、車の保険に加入し支払いできるようにした方がいいと思う。

 インターネットやIC時代の到来を言われているのに、まだ保険の未加入者が自動車を運転していることを可能としている今の時代のシステムがおかしいのであり、国内の車すべてが保険に加入させる「全車保険」の社会をめざした方がよい。自動車が保険加入情報をチェックしてエンジンがかかるようにするためには自動車保険会社との協力や新しい法律の整備が必要なので時間がかかるかもしれません。でも、保険会社がキャッシュカードのようなカードに保険情報のデータを入力し、車の運転台に設けた「カード読み取り機」で保険の加入の有無をチェックできるような仕組みは可能だと思う。たとえば、運転台の小さなカードリーダーに保険情報が入ったカードを入れると、「この車の保険は切れています。すぐお近くのコンビニで保険料金をお支払いください」という警告の音声が流れるようなシステムもいいと思う。

 3人の友達を死に追いやり、18人もの重軽傷者を出す事故を起こしながら、保険に未加入であったこと自体が問題であり、制度の改善によって保険の未加入者をなくす方法はあると思う。僕は、事故で亡くなった斎藤大(はじめ)君、三澤明音(あかね)さん、細井恵さんの3人を永遠に忘れない。そして、3人の友達を常に思い、事故防止の意見を未来に向かって発信し続けていくつもりだ。
 
 
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