■答辞

仙台育英学園高等学校卒業生代表 生徒会長 
菊田さん(特別進学コース)


 春の光に満ちた、この良き日に、私達卒業生のためにこのように厳粛で、晴れやかな卒業証書授与式を挙行していただき、心より感謝申し上げます。

 若者として当然ながら、新しい世界へ旅立つ期待と喜びそして少しの心配、不安が心中をよぎっております。しかし、率直に、私どもの心の奥を吐露させていただきますと、皆様との別れの辛さ、苦しさ、周囲への有り難さ、感謝の念で満ち満ちているというのが正直なところです。

 先ほどは、加藤雄彦校長先生の心のこもったお言葉を頂きご来賓の方々からの有り難い餞の言葉を頂戴し、後輩からは力強い激励の言葉を頂き身に余る光栄と感謝の念で胸が一杯になってくるのを禁じえません。

 どれだけ沢山の人々に見守られ、温かい目と手を掛けて頂いてこの私たちが存在しえたのか、どれだけ多くの人々の優しい心を煩わせてこの学び舎で高校生活を送ってきたのか、今日の別れの日に改めて実感しているところです。

 今年度の育英祭は「愛」がメインテーマでした。

 高校時代という青春のときにこそ私たちは「本当の愛」に目覚め、「真実の愛」を切望します。友人との愛、師弟間の愛、愛校心…あるいは学問や仕事への愛。これらは肉親との関係で始まった幼少期の「愛」と違って若人が自ら選び自ら創り上げてゆく「愛」なのですから、「愛し」「愛され」る形にも、その人の人間性が如実に現れ、人間の価値をも決定してしまうかもしれないのです。

 私の青春時代は、この仙台育英学園で始まりました。クラスメイトであれ部活の友であれ、ダメな私にも声を掛け続けてくれました。仙台育英学園の先生方は挫折した私にも幾度、懇切な指導の手をさし伸ばしてくださったことでしょう。

 加藤雄彦先生は思い出すのも恐ろしい一昨年のあの事故に対して、今もって慰霊と供養を怠らないとお聞きします。先生方、そして在校生ももちろん一丸となって3人の御霊の安寧を祈り続け、心の中にメモリアルストーンは永遠に残ることでしょう。25万人にも及ばんとする著名活動によって社会に警鐘を鳴らし続ける私たち仙台育英学園のその原動力、精神の根本はいったい何なのでしょうか。

 それはこの学園の中に脈々と渦巻く「至誠」に基づく「愛」逆境にも雄々しく立ち上げる「まけっちゃくねえ」の精神なのだと気づきます。先輩方はもちろん、毎朝「生活信条」を唱和し続けた私たちは、血となり肉となったものが確かに実在するように思います。

 私は将来「命」の誕生や「生命」を守る職業に就きたいと考えております。「命、生命」自体かけがえの無い価値を持つことは勿論、これらの関わり合い・関係に必須なものは「愛」であります。人間として絶対必要なものは「人を愛し」「ものを愛する」ことにほかなりません。育英祭のメインテーマはこの精神を象徴していました。この精神は私は、この学園で学びました。私の目指す職業だけでなく、人生全てに活かせるものを教えていただいたことに深く感謝いたします。


 私の現在の心の奥は別れの辛さと周囲への感謝の念だと申し上げました。この学び舎で多くの方々と過ごし得たこと、そして何よりも、互いを思いやる心、援助の手をさし伸ばす「愛」というものを教えていただいたこと。そんな仙台育英学園を去ることが本当に寂しいのです。

 サッカー、ラグビー、野球の応援、合唱コンクール、スキー・スノボー教室、研修旅行…皆皆懐かしい、充実した思い出です。今こうして振り返ってみると、これらの行事を経験するたびに未熟ながらもどこか変化してきた自分をはっきりと感じとることはできます。

 この学校は今後もそのような温かさを根底に滲ませた、青春時代を過ごすに相応しい、一人の生徒を大切にする学校として永遠に存続し続けてほしいと心から願っております。

 この学校に在籍したことを誇りにし、建学の精神「至誠」「質実剛健」「自治進取」を今後も生活の中に据え、広い視野と優しさと温かさに満ちた「ライオン魂」で明日の世界を切り拓くべく真摯に旅立つ決意をここにお誓いいたします。


 最後になりましたが、仙台育英学園の永遠の栄光と繁栄をお祈りし、校長先生をはじめ諸先生方、ご列席の皆様、後輩の皆さん、さらには、この学校に通わせていただき、陰ながら支えてくれた両親に心からなる感謝の念を捧げ答辞と致します。
 
<閉じる>