■答辞

平成21年3月1日
平成20年度 仙台育英学園高等学校卒業生代表 
吉田くん(
英進進学コース



 暖かい春風が吹き、希望の光に満ちた、この良き日に、私たち卒業生(784名)のためにこのようにおごそかで、晴れやかな卒業証書授与式を挙行していただき、心より感謝いたします。

 それぞれの胸には、本学園での3年間の思い出を振り返りながら、先生方や友との別れを惜しみ、これから進もうとしている新しい世界への喜びや、期待と不安が入り混じり、今日の旅立ちの日を迎えました。

 先ほどは加藤雄彦校長先生の温かく、かつ、身の引きしまる励ましの言葉をいただきました。また、来賓の方々から有難い餞の言葉を頂戴し、後輩からは力強い激励の言葉をもらい、身に余る光栄と感謝の気持ちで胸がいっぱいです。

 いままで、両親や家族をはじめ、どれだけたくさんの人に見守られ、応援され、見えないところで助けられて、今自分がここにいるのか、そして、どれだけたくさんの方々に無条件の愛で自分が支えてもらっていたのかを切に実感しているところです。

 高校1年4月。入学してすぐ友達ができるか、心配でした。心を分かち合う友達ができて、ふとしたことで、友達と話せなくなり悩みました。夏の甲子園野球応援、バスの旅で何気なく話したことで、あのときのわだかまりが解け、また話せるようになりました。秋の合唱コンクール、クラスの仲間と小さな軋轢をいくつも乗り越え、全員の心をひとつにできた喜び。冬のスキー・スノーボード教室では、それまであまり話す機会がなかったクラスの友達とも話せるようになり、夜通し話したことを思い出します。2年生の時の研修旅行では、校外で学ぶことにより見聞を広め、仲間とさらに友情を深め合いました。本当に心を許しあい、互いに協力し合い、学び会える友と出会えたことは、何事にもかえがたい経験であり尊い宝です。

 また建学の精神を学ぶ時間では、この学園の校訓である「至誠」「質実剛健」「自活進取」を、3つの柱として、創立者である、加藤利吉先生が、どのような生い立ちで、どのような思いでこの仙台育英学園を創立したかについて知ることができました。福島県の会津から15歳で単身、学問に志し、漢文と英語を学び、若くして戦争中のけがで生死をさまよい、仙台で育英塾を創り、若者たちを育て、仙台空襲では、宮城野校舎を全焼するなど幾多もの苦難を乗り越え、104年の歴史をもつ学園のいしずえを築いた利吉先生の姿から、私たちは、どんなに挫折を味わっても、どんなに苦しい状況におかれても、必ず逆転できる希望を持ち続けて前に進むことの大切さを知りました。部活動や様々な活動の中で、どんなに苦しい状況でも必ず道が開けることを学びました。私たちは、後輩のみなさんへ、このことは自信をもって伝えることができます。自分の行くべき道をしっかり見つめ、最後まであきらめず自分の道を切り開いて行ってください。

 今年の育英祭のテーマは、「チェンジ」〜私たちの熱い思いが育英祭をかえる〜でした。私は生徒会会長として、育英祭実行委員の人たちとともに、そして、クラスメイトや部活動の仲間とともに育英祭の内容を自分たちで考え、企画をし、先生方に、ご指導をいただきながらすすめていくことができました。その中で育英祭に参加する、様々なグループが集まり、それぞれの立場で意見を出し合いました。時にはたがいに企画について納得がいかず、口論になることもありました。また、企画についての制約や条件があることにも納得がいかず、わがままを先生方に押し付け、主張してしまうこともありました。そのような冷静さを欠く状態になっても、校長先生はじめ、先生方に温かく見守られ、ご指導いただき最後まで自分たちで育英祭を盛り上げていくことができたのは、社会に出る第一歩として大きな自信となりました。さらには、今こうして振り返ってみると、高校生活の様々な行事を経験するたびに、未熟ながらも、どこか自分の中で成長し、「チェンジ」した自分をはっきりと感じることができます。

 昨年末に、アメリカから始まり世界的に広がった金融危機の影響を日本を強く受けました。日本の中心となる大手企業の人員削減は、たちまちに中小企業にも広がり新卒の大学生や高校生の就職取り消しなども起こり世相は暗くなる一方のように感じてしまいます。しかし、どんな時代になろうとも、希望の光は消えることなく私たちの胸に輝いています。そのような厳しい状況の中だからこそ私たちの力が必要なのではないでしょうか。今こそ私たち一人一人の個性や能力が問われる時代になっています。卒業生が長年に渡って築いてくれた伝統と歴史、強い絆と信頼関係、そして先輩方の社会での実績を、我々は、さらに、幅広い分野で高く積み上げる使命感をもって、社会への第一歩を踏み出そうと思います。

 この学び舎で過ごした3年間の思い出を胸に、共に学びあい、助けあった仲間、未熟な私たちを最後までご指導してくださった諸先生方、いつもかげながら支えてくれた家族に言葉では言い尽くせないほどの感謝の気持ちを伝えたいです。普段は、なかなか言えずにいました。本当にありがとうございました。

 最後になりましたが、青春時代を過ごしたこの仙台育英学園が、今後ますます発展し、脈脈と続く在校生と卒業生の絆と伝統と歴史が永遠に続くことを祈念いたし、加藤雄彦校長先生をはじめ、諸先生方、ご列席の皆様、後輩の皆さん、さらには、これまで育ててくれた両親と家族に心から感謝申し上げ、答辞といたします。
 
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