「少年時代」という歌に「長い冬が窓を閉じて」という歌詞があるようにまだまだ冷たく厳しい復興の中にも、わずかばかりの光が見えてきました。例年以上に寒さの厳しかった冬も終わり、温かく降り注ぐ日差しに春の訪れを感じられる頃、私たちも新しい一歩を踏み出します。
本日は私たち卒業生のためにこのような盛大な式を挙行していただき、誠にありがとうございます。ご多忙にも関わらずたくさんの方々のご臨席を賜り、卒業生一同心より御礼申し上げます。
先程は加藤雄彦校長先生、ご来賓の方々からありがたい餞の言葉を頂戴し、後輩からは力強いエールをいただき、身の引き締まる思いです。
光陰矢の如しと申しますが、月日のたつのは早いもので、日本中の人々を混乱に巻き込んだあの東日本大震災から3年の月日が経ちました。当時、私たちはまだ中学生で、大半の生徒が中学校の卒業式を迎える頃でした。仙台育英の入試を受けた2011年2月。私たちが最初で最後に足を運んだ宮城野校舎は、震災で大きく崩れ、二度と元の校舎で学ぶことは実現しませんでした。
入学式も4月の末に行われ、本来ならば晴れやかに浮き立つ気持ちが先立つものですが、震災で個々が何かしらどんよりと重たいものを抱えながら始まった高校生活は、どうにも形容しがたいものでした。
生徒の中には予定とは違う環境で授業を行っていた者も多くいます。初日から多賀城校舎で学習した者、プレハブ校舎で学習した者、宮城野校舎から多賀城校舎に学年の途中で移動となった者…。明らかに、例年の入学者が体験しないような苦労を味わってきたと思います。むしろ、校長先生をはじめとした先生方、学校関係者並びに保護者の方々には想像以上のご苦労があったことと思います。震災で数々の行事を中止せざるをえませんでしたが、代わりとなる行事を開催していただき、ある意味私たちの学年でしか体験することのない、貴重な3年間にもなりました。例年通り行われた育英祭も盛り上がり、2学年時には多くの出店が立ち並ぶ中、ステージ発表も盛況で各々が楽しめた、思い出の1ページになったと思います。この育英祭では他の高校や中学では経験できないようなことをいくつもさせていただき、中でも他者との関わり方には他校との違いを感じました。育英祭は秀光中等教育学校の皆さんと共に作り上げた文化祭でした。普段部活や授業での関わりもないため他校の生徒と協力しているような感覚で、これが自分の価値観や考え方を変え、人との繋がりと協調性の大切さを気付かされるものとなりました。
私たちの高校生活は多くの方の支えがあり、無事過ごすことができました。海外からの支援もあって、充実した環境で学べ、多賀城校舎には屋外に新たな施設が整備されました。卒業し、社会人になってからグローバル化は留まることなく進んでいき今後もこういった外国の方々との交流は重要になっていくと思います。改めて人との繋がりの大切さや多方面からの支えによって生活できていると実感させられました。今まで自分が生活してきた地域だけでなく、世界に目を向けるきっかけにもなりました。
3年生に進級すると同時に宮城野校舎に戻れるということは何よりも嬉しい出来事でした。期待に胸を膨らませ、待ちに待った2013年4月。登校初日にはこれが本当に同じ学校なのかと目を奪われました。予想を大きく超えた校舎がそこにはあり、やっと自分たちの教室に入れるという気持ちで心機一転、最高学年にふさわしい新学期の迎えでした。
取り壊しを余儀なくされた宮城野校舎は着実に完成への歩みを進ませ、3年前では想像もしなかった素晴らしい姿で私たちを待ち受けていたのです。宮城野新校舎はまさに「逆転の仙台育英」そのものを表しているものであり、同時に私たちに夢や希望も与えてくれた気がしました。
仙台育英での3年間は自分の主張ばかりするのではなく、時には耐え忍ぶことや、人と人との絆がいかに重要なのかを考えさせられ、自分を客観的に見つめ直す良い機会にもなりました。
つい先日までソチオリンピックが開催されていました。中でも10代の選手が活躍し、メダルも多く獲得したことから、若い選手への注目が高まっています。近い将来、宮城県や日本を代表するような人々がこの卒業生の中からも現れるかもしれません。共通するのは「諦めない気持ち」。これに尽きるのではないでしょうか。私たちは、各々の進路や進むべき道は違っていても、この仙台育英学園で過ごした3年間で培ってきたものを存分に発揮し、建学の精神でもあった、至誠・質実剛健・自治進取の心を忘れず、社会に貢献できる大人になり、これからも日々邁進し続けて行きたいと思います。
最後になりましたが、ご指導くださった諸先生方、共に過ごした友人、今日までの3年間見守り支えてくれた家族、お世話になったすべての方に深く感謝し厚く御礼申し上げます。そして、仙台育英学園の一層の飛躍と発展を願い、答辞とさせて頂きます。
平成26年2月28日
卒業生代表 英進進学コース II 類 神宮 由佳 |