2012 Topics

  卓球 平野早矢香さんによる『在卒懇』開催

 
 
 

 北京オリンピック出場など、卓球選手として世界を舞台に活躍する本校出身の平野早矢香先輩(ミキハウス所属)が3月9日、世界卓球選手権ドルトムント大会を前にして本校を訪問。多賀城校舎の中講義室を会場に、外国語コース1、2年生および仙台育英卓球部の部員を前にして秀光・仙台育英卓球部のころの思い出、プロを目指しての思い、そしてロンドンオリンピックを目指して練習と試合に励む日々について、さらに後輩たちへのアドバイスを話してくださいました。

 今日、みなさんの前でお話する機会をいただくことができて、本当に嬉しく思っています。

 仙台育英を卒業してからミキハウスに入社して、卓球一色の生活を送ってきました。震災後は、仙台育英にすぐ飛んできたい気持ちでいたのですが、海外の試合や練習ばかりでなかなかみなさんに会いに来ることができず、本当に申し訳なかったと思っています。
 今日は秀光中学校から過ごした仙台育英での6年間の思い出や、私が経験した中でみなさんが社会に出る際などに役立つお話ができたらと思っています。実は私、試合以上に緊張しています。みなさんにはリラックスして聴いていただけたらと思います。

 私は卓球を5歳ぐらいから始めて、それからは卓球を中心とした生活をしてきました。小学6年生のときに仙台育英から、「新しく秀光中学校もできたので仙台育英で卓球をして全国で活躍しないか」というお話をいただきました。
 仙台育英といえば、当時の私にとって夢のような学校でした。当時小学6年生のときは全国大会で上位にいくことはありましたが、タイトルをとったりするレベルまではいっていなかったので、お誘いいただいていいのかなという思いもありました。
 憧れの仙台育英で自分が大好きな卓球をさせてもらえることが本当に嬉しかったので、両親は「卓球は高校生になってから県内(栃木県)の学校で」という考えだったのですが、その反対を押し切って、「自分は仙台育英で勉強するんだ」と泣きながら訴えて、この学校に入学させてもらうことになりました。
 私は秀光中学校の2期生でした。当時を振り返っても仙台育英学園で6年間勉強させてもらって本当に良かったと思っています。いろいろな高校を見て回っても、ほかの人の話を聞いても、仙台育英は私にとって特別な学校だったと思います。

 もともと「卓球で全国のトップにいこう」という考えで入学したのですが、加藤雄彦校長先生をはじめ諸先生方が私を自分の子供のように面倒をみてくださって、安心して卓球だけに集中できる環境を作ってくださいました。卓球で強くなることももちろん大切だけど勉強もして、人間性も高めて、卓球も強く、という思いが先生方にありましたし、選手にもありました。
 外国語コースに進んでからは、卓球部が仙台育英という学校の鑑となるような部活になるように、練習が中心ですが、しっかり授業もこなして思いっきり卓球をやりなさいと教わってきました。今思い返すと、勉強と卓球の両立は大変でしたが、勉強して、礼儀も教わって、寮で共同生活もして、そういう中で卓球をしてこられたことは、今役に立っています。当時の苦労は今の自分にとって必要なことだったんだなと強く思います。

 入学した当時は、体が弱くて体調を崩して学校を休むことも多く、卓球で普通に入学してきた選手よりもチームには迷惑をかけていました。特に中学校に入学したばかりの1年目は、故障などで体をこわして練習ができないことも結構ありました。当時アトピーがひどくて練習ができなかったり、特別早く帰らせてもらったり…。今考えるとスポーツ選手らしくない体の弱さで、人一倍先生方やチームのみんなに迷惑をかけていたと思います。
 当時は、中1の大会ならだいたい全国で3位やベスト8ぐらい。トップにはいけないけれど上位には勝ち上がれるというレベルでしたが、先生方やコーチは「今は下積みの段階だから、いい経験になる」とあたたかく見守ってくださいました。
 私としては、仙台育英学園に入ったからには全国のトップにいってはじめて学校に恩返しができるし親にも認めてもらえると思っていたので、優勝してなんぼだという気持ちが強くありました。ですが、優勝には届かず、中学校3年間のうちは団体も個人も全国で3位という成績が最高で、なかなか優勝までいけそうでいけないというのをくり返しました。
 そんな自分に対して、「将来いつか大きくなる」とずっと指導してくださっていた先生方のおかげで、高校2年生以下の部の全日本の大会で初めて優勝することができました。その大会は、仙台育英として初めてのタイトルだったようです。自分が弱かったときにずっと支えてくれた仙台育英の代表として出て優勝できたことが、自分としても大きな自信になりました。
 そんなチームメイトや先生方のいるところでできたということが、私にとってとても幸せだったし、逆に言えば仙台育英でそういう時期を過ごさなかったら、今の自分はなかったと思っています。
 特にその大会は自分が生まれて初めてとった全国タイトルだったので、自分の人生の転機というか、それがきっかけで私の今まで続いている道が開けたなというふうに思っています。
 私は大学に行かず、ミキハウスという会社に入らせてもらって、正社員ですがプロと同じ扱いで毎日卓球だけをさせてもらっています。仙台育英の6年間というのは、卓球のことでもそうですが、普段の生活で学業から礼儀まで学んで、そこで学んだことが今の自分を作ってくれたと強く思っています。

 今日は、卓球部だけでなく一般生の人もいると思いますが、自分の転機があったり、決断をしなければいけないとき、何か役立つ話はないかなとずっと考えていました。みなさんにお伝えしたいことはたくさんあるのですが、中でも「こういうことが自分を支えてくれたということ」を3つほどお話したいと思います。

 一つ目は、「仙台育英の生徒であるという誇りを持ってほしい」ということ。私は、卓球を通してですが、仙台育英で自分が大きくなった、人間的に成長できたということ、それが一番大きかったと思っています。たくさんの先輩方、もちろんスポーツの方も一般生の方、卒業生でもいろんな分野で活躍している人がたくさんいると思います。その先輩方が築いてきた歴史の重さ、それをみなさん一人ひとりが感じて、今いるみなさんが「新しい仙台育英の歴史を自分たちでつくっていくんだ」という気持ちを持って、毎日の生活を送ってほしいと思います。

 二つ目。私はもうすぐ27歳になりますが、中学、高校の生活はとても思い出に残っていますし、楽しかった当時に戻りたいと思うこともあります。でも、時間というものは還ってきません。一日一日を大切にして毎日を充実した日にしていってほしいと思います。
 周りにはたくさんの人がいて、いろんな個性があって、いろんな人がいますが、人と比べるのではなくて、昨日の自分、たとえば一年前の自分と比べてどのくらい成長できているのかとか、どういう人間になれているのかとか、自分の目標に向かってどういうふうに成長しているのかということを考えるようにしてください。昨日の自分と比べて少しでも成長するということが、大きな成長や大きな飛躍につながると思います。
 私の場合は、卓球で昨日の練習と比べて今日はどうなのかとか、一年前の試合のときと比べたら自分は強くなっているのかとか、いつもそんなことを考えながら試合をしています。みなさんの場合は学業であったり他の分野で活躍している人もいると思いますが、昨日の自分と比べてどのくらい成長できているかということを毎日感じながら、毎日を大切に生活してもらいたいと思っています。

 最後の三つ目。今ここにいらっしゃっているみなさんは一人ひとり個性や性格が違うと思います。私は卓球をいう道で、オリンピックをめざし、世界選手権をめざして、金メダルをめざして…、というふうに毎日生活しています。みなさんには、それぞれ自分の特技や自分の趣味、学業、自分の個性を活かせるものを見つけて、自分を知って、自分の道というものを探してこれからも生活していってほしいと思います。
 私がいつもいろんな方にお話するときに、卓球で私はここまで来ましたが、それは何にでも通じることで、勉強でもスポーツでもきっと同じことだと思います。自分の道を考えて、それに向かって毎日頑張っていくということが、自分の中でいいものを作り上げていくことにつながっていくと思います。自分が活躍する場を見つけて、それに向かって毎日頑張ってほしいと思います。
 そういうものを見つけるにあたって、今まで積み重ねてきた生活の中で悔しい思いや自分に対して落ち込んだり悩んだりしたことは本当にたくさんありました。笑っているときより泣いているときのほうが多かったかなと思います。でもやはり自分が下してきた決断、「仙台育英に入って卓球をしよう」とか、「ミキハウスに入社しよう」とか、「卓球で世界を目指すんだ」という、自分で決断してきたことに対して後悔したことはひとつもありません。みなさんが社会に出るときに自分が何をしたいか、何が好きなのかとか、そういうことを考えて、最後は自分でひとつひとつ決断していくことが、後に自分の人生を振り返ったときに「良かったな」と、「後悔なく楽しい思い出だったな」というふうに振り返れることにつながると思います。だから、何の決断であっても自分が思うように道を進んでいってもらいたいと思います。

 ここにいるみなさんは、仙台出身の人が多いと思いますが、一年前に起きた震災を含めて大変な場面に立ち会った人もいると思います。そういうみなさん一人ひとりの思いだとか活躍が、仙台の街を明るくしていけると思うので、「仙台に何ができるか」ということを考えながら、自分を見つめて自分が輝くことを見つけていってほしいと思います。

 私自身は、3月末には世界選手権の団体戦が控えていて、4月にはロンドンオリンピックのアジア大陸予選が控えています。4年に一度のオリンピックが控えていて、自分の卓球人生の中でもオリンピックは特別で、小さいころからの夢の舞台です。一度北京で経験はしていますが、メダルをとれなかったという悔しさが私の中に残っているので、今回なんとしてでも4月の予選会で出場権を得て、ロンドンオリンピックでメダルをとって日本に帰ってきたいと思っています。卓球では、今までの歴史の中で日本がメダルに届いたことがないので、今回は団体戦があるのですが、そこでみんなで挑戦して、みなさんにいい報告ができるように、これからも一日一日しっかり成長していきたいと思っています。

 私は今、大阪に住んでいるのですが、仙台育英のみなさんのことはいつも気になっていますし、皆さんの活躍は私自身もとても嬉しく思います。私もみなさんにいい報告を届けますし、皆さんも私にいい報告が届けられるように、それぞれ一人ひとりがいろんな場面で活躍していってもらいたいなと思っています。

 今日、こういう場を作っていただいて嬉しく思っています。高校生活を楽しんで、「いい高校生活だったな」と終われるように、みなさんのことを私も応援していますので、私の応援も今後ともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。


 平野先輩との『在卒懇』Q&A