平成15年度 卒業証書授与式 式辞
平成16年2月28日/29日
秀 光 中 等 教 育 学 校
仙台育英学園高等学校
校長 加藤 雄彦
本日、ここに多くのご来賓をお迎えし、第56回仙台育英学園高等学校卒業証書授与式(および秀光中等教育学校第1回卒業証書授与式)を挙行できますこと、たいへん嬉しく思います。また、お子様の晴れの卒業式にかくも多数の保護者のかたがたにお越しいただき、3ヵ年にわたり、本学園の教育活動にご理解とご支援を賜りましたこと、学校を代表し、御礼申し上げます。
学事報告にも掲載されている通り、みなさんは在学中の成果や功績を母校仙台育英に残してくれました。ごく最近の出来事として、京都、都大路を陸上競技男子チームが高校国内国際最高記録2時間2分7秒で西京極競技場のゴールテープを切ったことは強く印象に残っています。誰もが想像していなかった未知の記録であり、陸上競技部が80年を越える歴史のなかでつちかってきた切磋琢磨が至誠力走を発揮させたのです。そして、多くの高校駅伝ファンに感動を与え、地震や冷害、そして保護者の皆さんもご苦労されている景気低迷といった暗い世相を瞬間的にも明るくする話題提供をしたと思っております。改めて、ここまで努力精進されてきた陸上競技部のみなさんやOBたちに敬意と賛辞を送りたいと思います。
このほか、生徒会功労賞、特別功労賞、成績優秀賞(グランプリ賞)をはじめ、特に精皆勤賞を授与されたみなさんにはこれまでの忍耐強い頑張りをたたえたいと思います。
みなさんもよくご存知の一万円紙幣にそのお顔が出ている福沢諭吉は、人間とはどういうものなのか、よく知っている人でした。たとえば、乱暴な素質の人には粗暴と反対の勇敢な、という良い素質があります。軽薄な人には利口なところがあるといっています。しかし、人をうらやむ、人に嫉妬するということ、すなわち、怨望(えんぼう)という素質だけは良い素質とつながっていないといっています。何も良いものを生みださないこの素質を持った性格の人と将来何かを一緒にやらなくてはならなくなった時には、「どうぞ、本気で怒ったり、悲しんだりしないで欲しいのです」と申し上げます。
子供の世界で「怨望」に近い素質が意地悪さだと私は思います。大人がやる行動のなかで「怨望」という素質が原因となって生ずる行為と子供のやってしまう意地悪とは近いものを感じます。あなたに意地悪を言ったりすることを続ける人がいれば、「よし、私はこの人の言ったりしたりすることに本気で怒ったり、悲しんだりしない」と自分に言えばいいのです。そして、自分としては、人に意地悪なことは言ったりしないようにしようという原則をたてれば良いのです。「意地悪のエネルギー」はなにも生み出しません。残るのは荒廃し殺伐とした自分自身の心だけです。
怨望以外の一見短所にも見える良い素質を耕すために私はみなさんに次のことを人生の先輩として贈りたいと思います。それは、心にたくさんの「引き出し」を持てということです。数の多さや品質の良さが認められる引き出しを持っていると、「器の大きいひと」と評価され、人生における「成功の鍵」をたくさんプレゼントされるはずです。反対の評価をされる人には「成功の鍵」も、それをプレゼントしてくれる人も、機会もありません。
いま、母校仙台育英のまわりには何も生み出すものがない怨望の波が押し寄せ、高波となってわれわれに襲い掛かろうとしています。加藤利吉先生、ライオン先生の言葉「負けっちゃくない。おれは人生の道の途中で怒ったり、悲しんだりしない。至誠を貫き、決して人に意地悪なことをしない」と言い残した姿を卒業生諸君は忘れないでください。