
仙台育英学園高等学校広域通信制課程
理事長・校長

東日本大震災の発生から10年が経過するなか、仙台育英学園高等学校広域通信制は本校となるILC宮城と最初の分校であるILC青森に加え、ILC沖縄の教育環境を整備してまいりました。これら3校はいずれも、独立校としての設置基準である建築面積1,200平方メートルを目標にして建築を進めてまいりましたが、2022(令和4)年3月に完成予定の沖縄市胡屋2丁目に所在する沖縄校舎(栄光)の使用開始が待たれるところです。加えて、沖縄校舎の学校用地は、地域の人々のご理解とご支援により学校法人仙台育英学園の所有地となり、将来想定される広域通信制課程の設置基準の厳格化による見直しに対し、適切に対応できる状態になりました。
仙台育英学園高等学校では1905(明治38)年の創立以来、76,000名を超える卒業生が実社会へと羽ばたき、各地で「世のため人のために力を尽くす」存在となり活躍しています。
一方、1998(平成10)年4月に開校したILC宮城は令和3年度前期までの間に1,482名の卒業生を輩出し、2002(平成14)年に開設したILC青森では、湊高台校舎に移設後の人数を含めて888名が卒業しました。さらに、2014(平成26)年に開設したILC沖縄では286名が卒業し、ILC3校を合わせて2,656名(ILC3校平均卒業達成率67.3%)が待望の高等学校卒業資格を取得することができました。
それぞれの事情を抱えながら入学した新入生たちは、期待と不安が交錯する複雑な心境にもかかわらず、ご家庭や職場等のご支援とご理解はもちろん、個別指導を厭わない教職員の親身な指導のもと、仕事や子育て等を両立しながら高等学校卒業資格を得るための努力を続けてこられたものと思います。
この3校に関して「なぜ、仙台から始まり、八戸と沖縄に学校を作ったのですか?」と尋ねられることがあります。そうした問いに対して、「校長に就任した25年前、9%前後の在校生が全日制課程を中途退学していた状況を何とか改善していかなければならない、という強い信念から通信制課程を開校し、そこで学び直しができる環境を整備してきました。そこで再出発を誓った生徒たちを応援することができたことに安堵と喜びがありました。さらに、太平洋戦争によって写真の中でしか見ることが叶わなかった祖父に関わりのある八戸と沖縄で、世代を越えてその地域の人々に何とか恩返しをしたいという思いから開校をめざすことにしたのです」とお答えしています。そして、「赤道直下のパプアニューギニア独立国ポートモレスビー近郊にあるソゲリ国立高校にも、将来、ILCの海外第1校となる可能性を秘めた日本語学習センターがあります」ということもお伝えするようにしています。
仙台育英学園高等学校広域通信制課程には、高等学校卒業資格を何としても取得したいと切望する人々との出会い、そして、仙台育英学園が培ってきた「逆転の仙台育英」を展開できる教育環境が揃っています。今後とも「自治進取」の意気で変化を遂げる学校をめざして、ILC3校の教職員と力を合わせてまいりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。