大切なのは挑戦する意識、
そこから書道の楽しさ、喜びが生まれる

「書は茶道の所作に似てる」との渡邊先生の言葉。これは仙台育英書道部で続いてきた日々の稽古での“心構え”の基本といえるのかもしれない。

本校書道部の先輩である小湊陽先生。小湊先生は、かつて仙台育英生だった時代、書道部で2年時に初の“書の甲子園 全国準優勝”を体験し、自身も準大賞を受賞。その他、数々の賞を取り、大正大学に進学。表現学部で4年間書道に打ち込んだのちに、国語の教師として2016年に秀光中等教育学校へ。現在は、昨年から正式な認可校となった国際バカロレアのMYP(Middle Years Programme) に則った新しいかたちの授業を展開している。小湊先生は仙台育英生時代を振り返って、こう話す。

「書の専門性を極めるというより、書道を通じてどのように人間性を高めていくか、取り組みをしていくかといったある種“芸事”のような部分もありました。ただし、きれいな字を書けるようになりたいと思うだけが目標なら単なる“お習字”になってしまいます。そこが書道の難しいところであり、面白いところでもあります」

そして、こんな例を紹介してくださった。

「AIで筆を持って字を書くロボットを見たことがあります。正直、うまいと思いました。これだけ書けたら人間は必要ないのではと思える作品もありました。でも、大切なのはうまいか下手かではありません。大切なのは“意識”だと思います。自分からこの作品を書こう、挑戦してみようと思えるのは人間だけです。AIが人間に“芸術”という分野で勝てないのはそこだと思います。前向きな意識から作品は生まれます。気持ちを大切にしてほしいのです。ときに堅苦しく見られがちな書道ですが、そこから“楽しい”という気持ち、喜びは生まれます。その“やっていて楽しい”という時間を大切にしてほしいのです」

小湊陽先生(仙台育英 英進進学コース平成24年3月卒業、現在は秀光中等教育学校教師)

小湊陽先生(書の甲子園 全国準優勝当時の写真:後列右端)