MYPで得た知識と発信力を
生かして!
秀光生が取り組む
パーソナル・プロジェクト

キラリ★SWEAT & SMILE VOL.11  仙台育英学園高等学校 秀光コース 清水陵雅くん(長町小出身)

 

秀光の日々の授業は国際バカロレア(IB)の学習プログラムに則って展開されています。MYP(Middle Years Programme)は、IBの中等教育カリキュラム。その最終年次となる仙台育英学園高等学校秀光コース1年生が取り組むのがパーソナル・プロジェクト(PP)です。それぞれの生徒が興味関心を持つことからテーマを選び、それまでに身に付けたATL(学習方法)スキルを活用しながら、オリジナルの成果物を作成します。PPは培った知識と発信力を創造的に生かす取り組みであり、いわば4年間の集大成。生徒は①作品や成果物②プロセスジャーナル③レポートを提出する必要があります。

2020年度の秀光コース1年生が取り組んだテーマをいくつか例に挙げると以下の通りです。

動画の制作

  • ドローンを紹介する動画
  • 現在の教育のあり方に対して問題提起する動画

Webサイトの制作

  • 寄付を通して世界の問題を支援する募金Webサイト
  • 書道についてのWebサイト
  • 宮城の自然をアートを用い、クイズ形式で魅力を伝えるWebサイト
  • 環境問題のWebサイト

製作物

  • 自然災害発生時に簡単に作れる段ボールベッド製作
 

Photo/グローバルリーダーシップ研修で(2019年)

今回は、寄付を通して世界の問題を支援する募金Webサイトを作成した秀光コース1年生の清水陵雅くん(長町小出身)にお話を聞きながら、秀光生が取り組むPPについて詳しくご紹介します。

カナダへの研修で世界が抱える問題に
関心を持ちました

清水くんがPPで取り組むテーマは「世界各地で起こっている諸問題について詳しく知り、関心を持った問題に対して寄付を通して支援することができるWebサイトの作成」です。2020年11月には、中高生による社会課題解決を表彰するアワード「Steam Japan Award2020」においてブロンズ賞を受賞しています。

これをテーマに選んだきっかけは、中学校課程3年生のカナダでの海外研修(グローバルリーダーシップ研修)にさかのぼります。

「カナダへの研修中に、日本とかなり違う部分を実感する経験をしました。具体的には、街中にホームレスがあふれていて、普通に暮らしている人たちは見向きもしないのです。PPに取り組むときにその光景が頭によぎり、世界各国に報道されていないたくさんの問題が起こっているのでは、と。webサイトを立ち上げたのは、そういう問題に支援できたらと考えたからです」

 

Photo/MYPを取り入れた秀光の日々の授業

寄付先は慎重に選び
誤った情報を流さない

まずは、難民問題、栄養危機、自然災害など、世界各地の問題を調べました。MYPで身に付けた“情報リテラシー”のスキルを活用し、正確かつ効率よく問題を集めることに心掛けています。

「選ぶ基準として、第一にニュースであまり報道されていない問題に着目しました。自分で調べない限りは目に触れることがないものです。特に気を付けたのは、“誤った情報を流さない”こと。信頼できる機関が発信している情報を基に、慎重に選びました」

幅広い視野をもつために、日本語に加え、外国語(英語)の情報源も参考にしています。大陸をまたぎ地域に偏りがないように意識し、最終的には世界13カ国に落ち着きました。有名すぎるもの、寄付をしてもあまり役に立たないのではと感じた問題は外しています。

 

世界地図上に表示
視覚的にわかりやすく

webサイトは、シンプルな画面がわかりやすく、デザイン構成、内容、すべてを一から清水くんが考え、立ち上げています。ドメイン名も清水くんの発案です。

「問題をわかりやすく発信するために、世界地図を作りました。サイトを作るときに一番やりたかったことです。取り上げる問題の地域に印をつけて、クリックすると説明のページに移ります。問題ごとに3~5つの情報源を調べ、紹介しています」

世界地図から問題を紹介するページに飛ぶと、その説明が具体的にわかりやすくまとめてあります。国語は「苦手教科ですが頑張りました」。情報源から直接引用はせず、清水くんの言葉に書き換えています。

「文字がいっぱい並んでいると読む気にならないから、大事な部分の文字を大きく太くすることで、少しでも印象に残り、見やすくする工夫をしています」

キャッチフレーズについて質問するとすぐにパソコンを出して素早く確認しました。パソコンの扱いにとても手慣れており、相当使いこなしています。MYPは英語の活用が多く、中学3年生の課題として文献を使ったこともあるから抵抗ありませんでした。

 

Photo/MYPを取り入れた秀光の日々の授業

問題ごとに寄付
サイトに収支報告も

世界13か国の問題を紹介し寄付を募るにあたって、寄付金を集める方法も慎重に選択しました。

「各国の問題の説明ページから問題ごとに寄付を募ります。ぼくは高校生だから銀行口座やクレジットカードから直接入金できる許可は審査が難しく通りませんでした。そこで、インターネットでダイレクトショッピングをするときに使うPayPal(寄付する人が支払い方法を選べるサービス)を通して集めることにしました。仕方ないのですが、100円でも手数料がかかります」

手数料のほか、100円単位で切り捨てられるため、ある程度の金額(1,000円が目安)が集まってから寄付するようにしています。

「インドネシア地震の問題には合計940円集まりました。100円単位で切り捨てられるため、40円を無駄にしないために、60円はサイト側(清水くん)が負担し、合計1,000円を送金できました。寄付していただいた40円を無駄にしたくないし、日本では少額でも、大いに役に立つからです」

インドネシア地震の寄付については収支報告書を作成し、サイトで閲覧できるようにしています。「寄付していただいたお金は1円も無駄にしたくない」という清水くんの思いが伝わります。

 

classiでwebサイトの存在を拡散し、
募金集めの協力を呼び掛けました

PPは期間がありますが、先生に相談し、サイトの継続を決めています。将来は多言語で閲覧ができる「言語バー」を設置し、日本語以外に、英語と趣味で学んでいる韓国語を加えることを検討しています。さらに、世界各国の問題もこのままでは情報が古くなってしまうので更新し、場合によっては追加も考えています。9月下旬時点では、アクセス数1,300、計1万円近くの寄付が集まりました。

「ICT担当の先生に相談し、classiというICT教育プラットホームでwebサイトの存在を拡散していただき、募金集めの協力(寄付とサイトの拡散)を呼び掛けました。」

ICTの先生からは、サイト専用のSNSを立ち上げ拡散するアドバイスも受けています。

寄付してくださった方の実名はわかりませんが、サイト内にフィードバックという校内向けアンケートのフォームを設置しており、50件近い回答を得ています。サイトが環境によっては重く感じる、という意見もあり、多くの人が閲覧しやすくなるようにするなどの、改善点も見えてきたようです。

「高校生は銀行口座やクレジットカードを持っていないのが通常なので、ネット上で寄付するのは難易度が高い。だから、寄付はあまり集まらないのではという心配もありました。でも、このサイトを見て賛同し親に相談して寄付した、という回答もあったので、とても嬉しかったです。また、このサイトを通して世界で起こっている問題についての理解が深まった、という回答や、自分に何かできることはないかを考えさせられた、という旨の回答も多数集まりました。私が設定した課題の解決に貢献できたと感じています」と、笑顔の清水くん。「今後もサイトを見ただけで寄付したいな、と思ってもらえるようになりたい」と目標を掲げ、目を輝かせました。