生徒たちの自主性を尊重しながら
「さじ加減」に気を配っています

2021年12月の全国高等学校駅伝での優勝後、雑誌や新聞などのインタビューを受けることが多くなった。「指導者として今後の展望は?」、「先生の最終到着点は?」と、よく聞かれる。

「在任中に何回勝ちたいとか、こんな記録を出したいといった、私自身が掲げる目標や展望はありません。走るのはあくまでも生徒ですから」

その言葉の裏には生徒たちへの信頼が感じられる。

「毎年新しい部員が入ってきて、3年間で入れ替わるのが高校スポーツです。誰にもチャンスがあって、3年間努力すれば可能性を広げられます。その年その年で、生徒が設定する目標や夢に寄り添うのが私の役目です」

大事なのは「さじ加減」だ。選手はそれぞれ性格も違うし、走り方も違う。20人いれば20通りの指導法がある。自身の「陸上観」を押しつけたり締め過ぎたりすると、生徒たちは強制された感じがして、チームの雰囲気が窮屈になってしまう。かといって、自主性を尊重し過ぎて「先生はいつも偉そうにしているだけで、自分は何もしていないじゃないか」と思われると、生徒たちはついてこない。監督と選手の間でお互いがリスペクトしあう関係が理想だ。

「揺れ動く思春期。高校生として楽しみたいことは他にもたくさんあるはずなのに、生徒たちは毎日汗まみれで陸上に取り組んでくれる。そして、素晴らしい感動を監督の私にもたらしてくれる。生徒たちには感謝しています。生徒が頑張っているから私も頑張ろうといつも奮起させられています。本当に可愛い子どもたちです」