中1から始める小論対策
授業は生徒による作文の朗読で始まった。
「私は野球という夢を追い続ける人でありたい――」。 理想への道を真剣に語る野球部員の言葉に全員が聞き入る。別な生徒は人生の岐路をテーマに「正しい選択をするには、未来の予測が大切」と述べた。中学1年生とは思えない確かな視点と堂々とした発言姿勢に驚かされる。西條先生の授業では詩や作文を朗読した後、他人の良かった点やアドバイスを用紙に書いてクラス投票をおこなう。
「作文は大学受験における小論文を、 人前での発表は面接試験を想定した練習です。仲間から得た批評を励みに、正しい言葉遣いや人をひきつける話し方を覚えます」
グループ学習で理解度アップ
次に西條先生はルナールの散文詩を例に挙げ、「二つ折りの恋文は何を喩えたものかな?」「花の番地を捜しているってどんな状態?」と問いかける。全員が頭をひねりながら意見を出し合い、 ついに一人が「蝶のことだ!」と答えにたどりついた。おお、 なるほどとクラスから感嘆の声が上がると、 西條先生はすかさず「じゃあ、この詩の魅力が相手に伝わるよう文章で説明して」。“考えを言葉にする”作業を常に意識させ、テンポ良く授業が進む。 他学年の授業では、 教員の解説の前に生徒が教壇に立って模擬授業をおこなうことや、生徒同士で課題解決のために討論するグループ学習の機会を多く設けている。他者へ説明する過程で理解を深め、 疑問を自分たちで解決する力を養う参加型の授業だ。
文章構築に重点を置いて
「最近、携帯やメールの影響で漢字を書けない若者が増えてきました。また漢字の読み書きができても、多様な文章に触れる機会が少なければ語彙は増えず記述式の二次試験に対応できません。 さらに、 本文だけでなく、 問題文から出題者の狙いを読み取り、 論理的に根拠のある答えを見つけ、自分の表現で字数内におさめる訓練を段階的に実行しています」
もちろん、受験テクニック習得だけが目的ではない。授業を通じてもっと深く自ら学ぼうという貪欲さが生まれ、その姿勢が大学進学後も活かされることを西條先生は期待している。
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