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 第5回サイエンス・コ・ラボ

 
 
 

第5回サイエンス・コ・ラボ
日時:2012年10月20日(土)13:00〜16:00
場所:多賀城校舎 化学実験室
テーマ:『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』
参加生徒:秀光4・5年生および理系の特別進学コースの1・2年生
     (希望者)
指導:東北大学高等教育開発推進センター
    小俣 乾二 助教
    大学院および大学理学部の皆さん

 秀光中等教育学校と仙台育英学園高等学校 特別進学コースによる理科の共同実験講座『サイエンス・コ・ラボ』。その第5回が、10月20日(土)に行われました。
 今回は、東北大学高等教育開発推進センターから、助教の小俣乾二先生、そして4名の大学院生と大学理学部の皆さんが指導のため来校してくださいました。
 受講生徒は秀光4・5年生と特進1・2年生。実験は、3〜4人ずつの班に分かれて進められました。

 はじめに、秀光中等教育学校 佐藤一雄副校長先生から、ご挨拶がありました。「本日は、小俣乾二先生をはじめ、お忙しい中お越しいただきありがとうございます。今日は東北大学大学院理学研究科、そして理学部から4名、生徒のお手伝いとして来ていただいております。大学院生・大学生の皆さん、生徒に分からないところがある場合ご助力いただけますよう、私からもお願い申し上げます」と、挨拶をされました。


▼自然界に数多く存在する
 キラル分子

 第5回のテーマは、『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』です。
 右手と左手の関係のように、鏡に映した鏡像が、元のものと同一にならないという性質が見られるものを、”キラリティ(対掌性)を持つキラル”と呼びます。「ネジ花やアサガオなど、自然界のなかにもキラルは多く存在します。アサガオはよっぽど特別な育て方をしない限り、右回りにツタが育つのですが、これは、キラル分子によるものです」と、小俣先生が説明してくださいました。



 生徒は分子模型を使い、スライドに映された乳酸と酒石酸の構造式を見ながら、分子を組み立ててみることに。小俣先生の、「想像力を働かせてみよう」という言葉に、生徒は、対掌的な形を作ろうと、慎重に同じ班の人と相談しながら組み立てていました。


 また、キラルの関係にあり、重ね合わせることが出来ない2つの分子を”エナンチオマー”と呼びます。原子の数や化学的な反応が同一でも、立体結合の構造が異なるものです。この構造の違いによって、”旋光性”に変化が出るため、今回はそれを計測します。

▼お菓子の容器から
 旋光計を作ってみよう


 旋光性とは、光に”ねじれ”をおこす性質です。ねじれの角度を、旋光度と呼び、マイナスの旋光度は左に、プラスの旋光度は、右に光をねじる性質を持ちます。
 そこで、実際にチョコレート菓子の円筒容器を使用して、旋光計を作り、旋光度を計ってみることに。上下に小さな穴を開け、偏光板と発光ダイオードを取り付けて、目盛りの書かれたシールを貼ると完成です。



 まず、エナンチオマーの性質を持つ、リモネンを計測します。小俣先生がリモネンの瓶を掲げながら、「皆さんも匂いを確かめてみてください、(+)-リモネンはレモンの香りが、(-)-リモネンは、松の葉の香りがするんですよ」と説明してくださいました。結合が異なるだけで、二種類の香りが全く違うことに、生徒は驚いた表情をしていました。
 そして生徒は、大学院生・大学生の皆さんに測定器の目盛りの見方を教えていただきながら、リモネンの旋光度を測定しました。




 最後に、ショ糖の旋光度を計測する実験です。実験の結果、ショ糖と水の溶液は、旋光度が一定の値を保ち続けますが、ショ糖と塩酸の溶液は時間の経過とともに、旋光度がマイナスを示すことが分かりました。


▼「宇宙からやってきたのでは…」
 キラルの起源とは


 じつは、人間の身体に含まれる20種類のアミノ酸のうち、19種類はキラルで、エナンチオマーの片方のみが使用されています。身近なところにキラル分子が存在することを知り、生徒は驚いていました。
 さらに小俣先生のお話には、隕石にアミノ酸が含まれていた事例から、キラリティは、宇宙からやってきたのではないか、という地球外起源説が、現在有力となっているというものがありました。人間の身体にも含まれるアミノ酸は、もしかしたら宇宙からきたのかもしれないと、生徒たちも生命の神秘について考えさせられたのではないでしょうか。

 

『サイエンス・コ・ラボ』について