Shukoh Topics 2010  
   
   
前向きに生きるために
 
秀光中等教育学校 5年 佐藤 優真
 

 私の大切なもの。それは、一枚の家族写真の中にあります。そこには、両親と弟、そして私が写 っています。特に特別な日に撮ったわけではないのですが、そこに写った私は笑っていました。その写 真を見た時、私はふと思ったのです。「いつだったろう、笑顔が下手になったのは」。
  小学生の私の写真を振り返ると、大体が笑顔でピースをしたり、ポーズをとったりと、とても楽しそうに見えました。それが、中学生の家族旅行、クラス写 真を見ると、驚いたことに笑顔で写っているものはほとんどありませんでした。すました顔をして、枠におさまっているだけ。その変化をもたらしたものは母との衝突がきっかけだったのだと思います。
  母はもともと、厳しい人間でした。小学生の時も何度も叱られた思い出がありますが、その頃の私は素直だったのでしょう。黙って言うことを聞いていたのですが、中学生になり、様々な人と出会う中で、物事を深く考えるようになると、私は母の言葉や行動に疑問を感じることが多くなりました。そし て、私はその都度、母に反発するようになっていました。毎日、些細なことで言い争いを繰り返しました。家族の雰囲気は悪くなり、夕飯の食卓でも会話は弾みません。何か楽しいことがあって、思いっきり笑いたいときにも、母の前では素直に笑うことができなくなってしまいました。
  その頃私は、年度末に行われる宿泊研修の実行委員長を務めていたため、その活動に打ち込むことで家での不満を紛らわそうとしていました。その研修では、研修場所や内容など、細かなことまでを生徒自分たちで決定し、作り上げることを目的としていたため、実行委員長である私の責任は、当然、重いものでした。研修を成功させるためには、学年の統率が大前提でしたが、私は、皆に反発されることが数多くありました。担任の先生や友人によると、どうやら私は「笑顔」が皆の前では少ないようで、それが皆に悪い印象を与えているようでした。母とのこともあり気持ちが張りつめていたため、いつの間にか学校でも笑うことが減っていたのです。そのことで、私のことをよく知らない人には、「怖い、厳しい」ようにしか見られず、仲のいい友人にも、「最近疲れているね。大丈夫?」と余計な気遣いをさせてしまいました。これではいけないと思い、私は笑顔を磨くことにしました。人と話すとき、笑顔 をなるべく見せ、明るい印象を与えられるように意識したのです。その成果は少しずつ表れました。皆も私の声に応え、行動してくれるようになったので す。皆が私についてきてくれたことによって、無事に宿泊研修を成功させることができました。
  笑顔を増やしたことは、学校だけでなく、家での私の印象にも変化をもたらしました。笑顔を見せることで、母との言い争いも減り、母の意見にも納得できるようになりました。
  笑顔は、出会いの第一歩であると私は考えます。たとえば、初対面の人に、「こんにちは。」と笑顔で言われるのと、無表情で「こんにちは。」と言われるの。どちらが良い印象を受けるでしょうか。私ならば、笑顔で話しかけた方を選びます。笑みをみせることで、相手はその人に「親しみやすい、明るい」印象をもちます。第一印象で相手と信頼関係を築くきっかけを作ることができるのです。
  またそれは、普段から見知った人の間でも変わりません。笑顔の人の周りには、笑顔の輪ができます、誰か一人が笑うことで、周りの雰囲気は明るいものへと変わります。誰しも落ち込んでいるときは、いつかは気持ちを切り替えようと努力するもの。そんなときに、誰かの笑顔は顔を上げ、前を向くための触媒となります。笑顔は笑顔を生むことができるのです。誰かの笑顔が誰かに勇気を与えることだってあります。そして、自分自身もまた誰かの笑顔に助けられることがあるでしょう。
  笑うということ。それは、前向きに人生を送るために必要不可欠な要素であると私は考えます。自分自身を明るい気持ちにさせるというのはもちろんのこと、どんなに大変な時であっても、いや大変な時こそ、笑顔をみせることで、周りには自分を信頼する人の輪ができます。その仲間は、いつか自分の助けとなり、支えとなるでしょう。
  皆さんは最近、心から笑ったことがありますか。疲れていると、笑顔は忘れがちなものです。しかし、私はどんなに忙しく、つらいときでも、家族写真を撮ったあの頃のように、素直に笑える自分でありたいと思います。
  私の大切なもの。それは、この笑顔です。(笑)


 
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