日 時:2009年5月22日 9:30〜12:00
場 所:多賀城校舎グローリーホール2階
参加者:秀光中等教育学校全校生徒
 
   
 グローリーホールでは「“ I-Lion Day”メモリアル映画上映」と題して、映画「0(ゼロ)からの風」の上映と、映画のモデルとなった鈴木共子さんを講師にお迎えして講話が行われました。

息子の死を無駄にせず
息子の人生の分まで生きる

 映画「0からの風」は、神奈川県在住の造形作家、鈴木共子さんの実際の体験をもとにして作られたノンフィクション映画です。
 鈴木さんは、飲酒運転の車に一人息子の零(れい)くんの命を奪われました。 零くんが念願の早稲田大学に入学した一週間後のことでした。加害者は飲酒運転、スピード違反、無免許、無車検、無保険。悪質なドライバーであったにもかかわらず、刑期5年の「業務上過失致死傷罪」と処理されました。そのことに疑問と怒りを感じた鈴木さんは刑法の厳罰化に向けて立ち上がり、署名活動を開始。やがて全国から署名が集まり、「危険運転致死傷罪」という新しい法律が成立しました。その後も、零くんの人生を代わりに生きることを決意した鈴木さんは、早稲田大学への受験を目指します。零くんの教科書やノートを使って受験勉強をし、見事合格を勝ち取りました。そして、現在は代表を務める『生命(いのち)のメッセージ展』を全国で展開し、命の尊さを伝え続けています。
秀光生を前に講演される鈴木共子さん。一人息子の零くんの等身大オブジェとともに。
 
   

命の尊さを心に訴えることで
理不尽な事件・事故をなくす活動を


 映画の上映後、鈴木さんは講話の中で、『生命のメッセージ展』について「刑法の厳罰化を求めるたけではなく、飲酒運転は人間としていけない行為だということを喚起させ、心に訴える活動をしなくてはならない」という切実な思いがあったことを話されました。

 「『生命のメッセージ展』を通して、生きたくても生きられなかった人たち、その一人ひとりを想像してほしい。事件・事故は決して他人事ではないということ、命はかけがえのないものだということを、知るのではなく感じてほしいのです。悲惨な事件や事故の現実を伝えているけれども、究極には“生きていることへの賛歌”なのです」

 “命はかけがえのないもの”ということを伝えていくため、“命”をキーワードに、映像、音楽、演劇など、さまざまな表現手段で発信していきたい、それが生涯を通しての夢だと鈴木さんはおっしゃいます。そこには亡くなられた一人息子の零くんへの思いが根底にありました。

 「亡くなってしまった息子には何をしてあげればよいのかと考えた末、私が生き生きと生きることが息子を幸せにすることにつながるんだということに気付きました。映画のタイトルにかけて言えば、私はゼロから、零くんからの風を受けて、夢を持って輝いて生きようと思っています」

 最後に鈴木さんから生徒たちへのメッセージが。

 「私が何より皆さんに伝えたい、お願いしたいことは、犠牲になった人たちの分まで精一杯生きるという誓いを立ててほしい。一人ひとりが誠実に精一杯生きるという思いを持っていたならば、犯罪、悪質な交通事故、いじめなど、そんなことは起きないんじゃないかと私は信じているのです。というよりも、祈りに似た気持ちを持っています」

事故のことを心に刻みながら
一日一日を精一杯生きていきたい


 I-Lion Dayの講話で貴重なお話をしてくださった鈴木さんに、秀光生を代表して、生徒会長の岩本くん(秀光5年)がお礼の言葉を述べました。

 「私が秀光に入学したばかりの頃、同じ仙台育英学園に入学し、高校生活をスタートしたばかりで私たちと同じように未来のある仲間たちの命が一瞬で奪われてしまった事件にとても大きなショックを受けました。このような事故が二度と起こらないように一つ一つの行動に責任を持ち飲酒運転を絶対に許さないという覚悟のもと、日々過ごしていきたいと思います。そしてこのような事故が発生してしまったということをその場限りの話題で終わらせ風化させてしまうのではなく、日々胸の中に刻み、人のために何ができるか私達一人ひとりが社会に役立つことは何かを常に考えながら犠牲になった人たちの分まで精一杯生きていきたいと思います。本日は本当にありがとうございました」

※『生命のメッセージ展』
事件や事故などで理不尽に命を落としてしまった人たちの等身大オブジェと靴などの遺品の展示を通して「命の尊さ」を訴えるイベント。鈴木さんの呼び掛けで2001年から始まり、現在も全国各地で開催されています。