震災で命の大切さを実感した
皆さんだからこそ…


 5月22日午前8時50分、『いのちのミュージアム』の岡崎照子さんによる校内放送が、多賀城校舎内で流れました。
 岡崎さんは二年前の『I-Lion Day』でも同じようにお話をしてくださっています。放送では、突然の交通事故によって娘さんの命を奪われた悲しみと無念さが語られ、このあと行われる『生命のメッセージ展』についての説明がありました。そして、「皆さんは昨年の震災で、もう既に命の大切さを誰よりも強く実感していることと思います。そんな皆さんだからこそ、未来を絶たれた人たちの声を受け止めていただけると思っています 」と生徒たちに語りかけました。

 岡崎照子さんのお話


“メッセンジャー”一人ひとりの
名前が読み上げられて


 岡崎さんのお話のあと、放送部の生徒が今回展示される“メッセンジャー”147名の氏名と享年、出身地を交代で読み上げました。3名の放送部の生徒たちは次のように感じたようです。
「今の放送で将来現実でかなえたかったことが少し伝わったら良いと思った」(放送部・女子)
「自分と同じ年齢の人もいらっしゃったのがつらくて…。その人たちの分も頑張って生きていきたい」(放送部・女子)
「事故を減らすにはどうしていったらいいのか考えなきゃいけない」(放送部・女子)

未だ後を絶たない飲酒運転…
犠牲者147名のパネルが並ぶ


 『生命のメッセージ展』(NPO法人『いのちのミュージアム』主催)は、多賀城校舎グローリーホールで開かれました。会場には理不尽に命を奪われた犠牲者147名の等身大人型パネル“メッセンジャー”が並びました。
 今回開催するにあたって『いのちのミュージアム』事務局の土屋哲男さんは「前回は、生徒さんたちと同年代の中高生のメッセンジャーを一カ所に集めましたが、飲酒運転による事故がなかなか後を絶たないので、今回は飲酒運転の犠牲者を中心にしました」と話されます。
 メッセンジャーの胸元には、生前の写真、事件・事故当時の新聞記事、遺族の言葉が添えられ、足元には遺品の靴が展示されており、息を引きとった時の様子や残された家族や友達の深い悲しみが鮮明に表されています。 今回も生徒たちは一人ひとりメッセンジャーと向き合い、その強烈なメッセージを重く受け止めたようです。

「(大人の無責任さで起こる)飲酒運転のせいで子どもが亡くなってしまったので許せない」(英進進学コースI類3年生・女子)
「この事故で犠牲になった人は、こんな早く命を落とすと思っていなかったはず。家族はつらいかもしれないけど本人が一番つらいと思う」(英進進学コースI類3年生・男子)
「5.22の事故について、去年は(震災の影響で『I-Lion Day』が開催されなかったため)先生の説明だけだったので、交通事故は自分には関係ないと思っていた。でも、実際にこういうのを見ると違う。人ごとではないと思った」(外国語コース2年生・女子)


あなたが生きていること、
ただそれだけで両親は幸せです

 会場で、メッセンジャーである娘の愛さんとともに生徒たちを見守っていた岡崎さんは、次のように思いを語ってくださいました。
 「この『I-Lion Day』という、命について考える日が毎年あるのは仙台育英学園の生徒さんにとって、大人になっていく過程で大切なことが身につく良い機会になると思います。私が生徒さんに一番訴えたいことは、最後まで生きなくてはいけない、ということ。メッセンジャー一人ひとりには皆、家族がいるのです。生きているだけで十分、それだけで両親に幸せをあげていることなんだということを、ぜひ一人でも多くの人にわかってもらいたい、その一心でこの活動を続けています」

 
 
※『生命のメッセージ展』
悪質な交通事故や犯罪、医療過誤、いじめなどが原因で理不尽に命を奪われてしまった人たちの等身大人型パネルと、靴などの遺品の展示を通して「命の尊さ」を訴えるイベント。代表を務める鈴木共子さんの呼び掛けで2001年から始まり、現在も全国各地で開催されています。