"知識ゼロ"で
高校から始めたパソコン、
2年生の今、目指すのは
「MOSマスター」!

キラリ★SWEAT & SMILE VOL.09 仙台育英学園高等学校 情報科学コース 阿部 快聖くん・榊原 澪くん

 

情報科学コースは、設立以来、“情報社会のエキスパート養成”を目指してきた。専門的なICT関連の知識や技術を学び、日々生徒たちが資格・検定などの取得に向けて積極的に取り組んでいる。

2019年4月上旬には「MOS世界学生大会 2019」において、情報科学コースの卒業生である新田絢那さん(東豊中出身)が高等学校・高等専門学校・高等専修学校部門「Word 2016」「PowerPoint2016」で国内1位、 同じく同コースの卒業生坂田裕介さん(盛岡厨川中出身)も同部門「PowerPoint2016」で入賞するなど、コースの取り組みは着実に成果を上げつつある。

2年生5人が
情報処理検定1級を取得

目まぐるしく進歩を遂げるICTの技術に対応するため、情報科学コースのICT教育も常に最新のものを目指す。今回、登場してもらったのは2年生の阿部快聖くんと榊原澪くん。「令和元年度(第61回)情報処理検定試験」1級(ビジネス情報部門)には彼らを含む2年生5人が合格している。

令和元年度(第61回)情報処理検定試験1級合格者

「3級と2級は僕も榊原くんも1年生のときに取得しました。2級までは実技と、選択式の筆記試験。1級は実技がなく筆記試験のみの記述問題でした。1級になるとただ暗記するだけではなくて、どういうときに何と組み合わせるとどう応用できるのか、というところまで理解を深めるように心がけました」(阿部)

「情報処理検定のときに学校の定期試験が近く、試験勉強と検定の勉強をしないといけなかったので大変でした。時間のやりくりを工夫しながら両立させました」(榊原)

二人ともそれぞれ対策を練り、難関の試験に臨んだ様子。しかし1級ともなると、自習だけでは理解できない部分もあったという。「わからないところは放課後、情報科学の先生方が丁寧に教えてくださいました。先生方の手厚いサポートがあったからこそ合格できたと思っています」(阿部)

 

Photo/資格取得を目指すグローバルライセンスの授業【宮城野校舎 南冥パソコンルーム4F】

パソコンの知識がほとんどない状態で
情報科学コースへ

情報処理検定やMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)などの資格取得を目指す「グローバルライセンス」という授業を、情報科学コースでは3年間全員が履修している。資格取得はコース全体が掲げる共通目標のひとつ。情報処理検定のほかにも阿部くんは1年生の3月に、榊原くんは2年生の5月にMOS エクセル スペシャリストの資格もそれぞれ取得している。

「資格を取得していくのが好き。資格に向けた勉強が今とても楽しい」という阿部くんと、「ExcelとかWordとか、会社で将来的に使える資格を取っていきたい」と話す榊原くん。本校の情報科学コースを選んだ理由について聞いてみると、二人から意外な答えが返ってきた。

「実はパソコンはあまり触ったことがありませんでした。家にもパソコンはなく、ローマ字すら打てなかった(笑)。だからこそ、敢えての情報科学。パソコンを克服するためにも入学しようと決めました」(阿部くん)

「僕も入学前はパソコンはあまり得意ではなくて。でも情報系には興味がありました。それで仙台育英の情報科学コースを見つけて、この高校いいな、と思って入学しました」

パソコンの知識がほとんどない状態で入学したという二人にとって初めての「IT系」の授業はどのようなものだったのだろうか。

「操作方法が全然わからなくて、友達に教えてもらいながら少しずつ、という感じです。最初は、キーボード入力を覚えることからスタートしました」(阿部くん)

「入学して1週間しないうちに、Surface(タブレットPC)が一人一人に貸与されました。最初はとまどいましたが、授業で使ったりしているうちに好きになってきて。もっと覚えてみたくなって自分でも勉強しました」(榊原くん)

 

Photo/Surfaceを使用した授業でのグループワーク【宮城野校舎 南冥4F教室】

一人一台のタブレットPCを活用しているうちに
レポートをまとめる力がつきました

情報科学コースの授業では、ICT関連科目以外の教科・LHR・総合的な探究の時間などで、Surface(タブレットPC)が使われている。これをどのように活用するかは生徒次第だ。

「ノートがわりに文字をただ入力するだけでなく、グラフや資料も使います。“もうひとつの教科書”として使えるように課題(テーマ)についてSurfaceでまとめ、その作業の中で知識を深めていく、という授業もありました」(阿部くん)

「数学や国語は筆記のノートを使いますが、文学史などを検索で調べるときにSurfaceを活用することも。作者の代表作品を調べて、それについて自分がどう思ったかというのをWordを使ってレポートにした時もありました」(榊原くん)

パソコンに関する知識がなくても、それぞれ工夫をして活用しているようだ。Surface活用の授業内容については、こちらで詳しく紹介している。

初めは何もわからない状態から入ってレポートを作り「全然下手だった」という阿部くん。情報の授業を重ねていくうちに、相手に伝わりやすいまとめ方などを先生たちから教わり、自分でもこうしてみよう、と工夫を積み重ねて、レポートをまとめる力がついたと語る。榊原くんも「授業で使ったりしているうちにパソコンが得意になってきた気がします」と、自信をつけていったようだ。

 

Photo/eスポーツ講座(学校選択科目)では本格的なゲーミングPCも使用【宮城野校舎 南冥パソコンルーム5F】

今話題の“eスポーツ”を
部活動や学校選択科目として導入

資格取得やSurface以外にも、コースで積極的に取り組んでいるのが、世界的にも盛り上がりを見せている“eスポーツ”(エレクトロニックスポーツ)。複数のチームで協力しながら、コンピューター(ビデオ)ゲームで対戦する、というものだ。2019年4月から部活動として本格的にスタートした「eスポーツ部」は、2018年から先駆けて活動しており、同年12月の「第1回全国高校eスポーツ選手権」に出場し、ベスト8に進出した。

競技として情報科学コースで使っているのは“League of Legends”という5人1組の対戦形式のゲーム。阿部くんも1年生のときeスポーツの大会に挑戦した生徒の一人だ。「チームプレイで、仲間と協力する力と勝ったときの喜び、達成感をみんなで分かち合うのがeスポーツの醍醐味だと思います」

仙台デザイン&テクノロジー専門学校での講習の様子

さらに2年生を対象に、学校選択科目として「eスポーツ講座 」も2019年5月から開講した。指導してくださるのは日本電子専門学校(東京新宿区)の先生方と専門学生のみなさん。ゲーミングPCを使ってスカイプ等の通話アプリを介し、資料を使いながら授業を進めている。受講者は「第2回全国高校eスポーツ選手権」に出場する予定の希望生徒が中心。2年目となる今回こそは前回果たせなかった決勝大会進出を目指す。

 

Photo/AI・プログラミングの授業【宮城野校舎 南冥パソコンルーム5F】

3年生はプログラミング言語で
3DCGのオリジナルゲーム開発に挑戦!

本コースの特徴的な授業のひとつとして「プログラミング」も挙げられる。「アンドロイドスタジオ」というツールを使い、1、2年生で簡単な操作から段階的に慣れていき、3年生では難易度の高いゲームやアプリの開発に挑戦する。今年3年生の生徒が作成した「おみくじ」アプリが現在Google Play(デジタルコンテンツの配信サービス)上で配信されている。

そのアプリ開発などの前段階として1、2年生で設定されているのが「創作演習」という授業だ。ソフトを使って簡易的にゲーム開発を体験できる。最初は、ジャンケンゲーム、体重管理測定アプリなど比較的簡単なものをソフトを使って作成することで、アプリ開発のアウトライン的な部分を理解する。2年生になると、スライドショーに音声を流したり、自動的に写真を切り替えるなど、アレンジを加えることを学習し、徐々にレベルを上げていく。

そして2年生の後半で阿部くんと榊原くんが挑戦しはじめたのが、3DCGのゲーム開発。最初は難しいコードは使わずに「Unity(ユニティ)」というソフト(ゲーム開発プラットフォーム)で、ペイントソフトのような直感的な操作をしながら、画面上に3DCGゲームのステージを構築していく。オリジナルの島を地形から作って、宝物を上から落とし、アバターを操作して見つけるゲームだ。

「最初のうちは失敗して動かなかったりしたのが、最後に動いたときは本当に嬉しくて達成感がありました。専門分野を学ぶコースだから先生方も、どうしてダメか、という理屈までとことん掘り下げて教えてくれるのでとてもわかりやすいです」(阿部くん)

情報科学コースの日野彰先生は「生徒たちはそれぞれ創意工夫をしながら、楽しんでやっているようです」と話す。「Unityもアンドロイドスタジオも海外のフリーソフト。良いソフトが出てくるので積極的に取り入れています。例えば3年生は、ロボットにプログラミングする授業も始めています。Python(パイソン)というプログラミング言語を活用して、人工知能(AI)について勉強しています」。

 

パソコンに興味があれば
知識がなくても問題なし!

この先の目標は、という問いに二人とも「MOSマスター!」と口をそろえる。MOSマスターとは、同一バージョンのMOSのうち、指定の4科目に合格すると認定される、というもので複数のアプリケーションを効果的に使えるスキルを証明する。それを二人が手にする日は、おそらく遠くないはずだ。

「資格はもちろんですが、同時に大学の受験勉強もしっかりやっていきたいと思っています」と話す榊原くんが現時点で志望している大学は、福島県の会津大学。「1年生の時に校外研修で行ったのですが、そのときに模擬授業を受けて、この大学で勉強したいと思いました」

阿部くんも情報系の大学を目指す。「比較的新しい学部で設備が整っている東洋大学の情報連携学部を狙っています。資格を多く取得できるというところにも惹かれました」

もともとパソコンにはあまり触れてこなかった、けれど思い切って入ってみたら操作を覚える楽しさを知り、そして今、目標に向かって資格を次々と手に入れている。そんな二人が、中学生へメッセージを贈ってくれた。

「パソコンの知識が全くゼロでも、コースの先生方や先輩は優しく教えてくれます。入学前の僕たちのようにパソコンを覚えたいけど、自分には無理なのかな、と迷っている人はぜひ怖がらないで、情報科学コースで勉強してみてほしいと思います」。