2013 Topics

 第3回サイエンス・コ・ラボ

 
“キラリティを持つ物質(キラル)”の構造を理解し、身近なものから旋光計をつくってみよう
 
第3回サイエンス・コ・ラボの様子
分子模型 第3回サイエンス・コ・ラボの様子
 
第3回サイエンス・コ・ラボ

日 時:2013年9月14日(土)13:00〜16:00
場 所:宮城野新校舎 新“南冥”化学実験室
テーマ:『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』
参加生徒:理系の特別進学コース1・2年生(希望者)
講 師:東北大学高等教育開発推進センター
     小俣 乾二 助教
     東北大学大学院理学研究科の皆さん


 秀光中等教育学校と仙台育英高等学校の特別進学コースによる理科の共同実験講座『サイエンス・コ・ラボ』。今年度の第3回目のテーマは、『分子のキラリティ(対掌性)と旋光度の実験』です。
 昨年度に引き続き指導をしてくださったのは東北大学高等教育開発推進センター助教の小俣乾二先生、そして2名の大学院生が来校してくださいました。宮城野新校舎の化学実験室には、参加生徒として特別進学コース1・2年生の希望者が集まりました。

昨年度の様子はこちら



キラリティ(対掌性)とは
自然界にもキラルが存在します


 今回のテーマの“キラリティ(対掌性)”とは、人間の右手と左手の関係のように重ね合わせることができず(両手のひらを平面に置いて、上下で重ねた状態)、そのものを鏡に写したときの鏡像が同一ではない性質のことで、キラリティがあることを“キラル”と呼びます。小俣先生は、自然界に存在するキラリティとして植物や魚などの例を挙げて「魚のヒラメはお腹を下にして置くと必ず左向き、カレイは必ず右向きですね。つまり、とても大きな枠で見た場合2つが対掌体であるともいえます」と説明されました。



第3回サイエンス・コ・ラボの様子 第3回サイエンス・コ・ラボの様子


 最初に分子模型を使い(+)、(−)の乳酸と酒石酸の分子を組み立て、2つが対掌性の関係であることを確認することに。2人1組になった生徒たちは構造式を見ながら分子モデルの組み立てに挑戦し、分からない部分は小俣先生や大学院生の方に教わりながら、キラリティを持つ分子についての理解を深めました。


第3回サイエンス・コ・ラボの様子 第3回サイエンス・コ・ラボの様子

エナンチオマー同士の旋光度の違いを
旋光計で確かめる

 つぎにキラルの関係にあるペアの化合物は、一方を指して“エナンチオマー”と呼ばれることがあり、エナンチオマー同士は沸点・融点など化学的な反応性は同一ですが、旋光度が異なることが説明されました。旋光度とは光に“ねじれ”を起こす性質で、今回は旋光計を作製して計測します。旋光計はお菓子の円筒の中に、偏光板や発光ダイオードを入れて組み立てたもの。生徒たちは試験管に入れたエナンチオマーである、(+)-リモネンと(−)-リモネンの香りの違いなどを確かめます。目盛りの読み方を教わり、旋光計を覗き込む生徒たちの表情は真剣そのものです。ほかにもメントールやショ糖などの旋光度も計測し、光のねじれを確かめました。


第3回サイエンス・コ・ラボの様子 手作りの旋光計
第3回サイエンス・コ・ラボの様子 第3回サイエンス・コ・ラボの様子

人間のアミノ酸も19種類は
キラル分子でできています

 最後に小俣先生は身体の受容体についても、「旋光度の計測で使用したメントールという成分は触れると冷たく感じますが、実際に温度が下がっているわけではないですよね。細胞の受容体と(−)-メントールが反応しているからで(+)のときは反応しません」と詳しい説明をしてくださいました。さらに人間の身体に含まれる19種類のアミノ酸もキラル分子であることや、宇宙の隕石にもキラル分子が含まれていたことなど興味深いお話が盛りだくさん。生徒たちにとって、多くの知識とともにキラル分子を身近に感じることができたようです。