2021年4月開校

お知らせ

第14回卒業証書授与式 答辞全文

 如月の厳しい寒さも和らぎ、鳥のさえずりや梅の小枝の趣にも躍動の春の訪れを感じられる季節となりました。

 本日は私たちのために、このような盛大な卒業式を挙行していただき、卒業生一同、心より御礼申し上げます。

 先ほどは加藤雄彦校長先生の式辞をはじめ、父母教師会会長、鈴木良英様のご祝辞、生徒代表の送辞など心温まる数々の激励のお言葉をいただきました。誠にありがとうございます。

 思い起こせば、6年前の3月、私たちは未曾有の大震災「東日本大震災」を経験しました。多くの尊い命が失われ、涙にくれた、あの春のことを忘れることはできません。小学生の私は、危機に瀕した日本を立て直そうとする大勢の姿を目の当たりにし、将来自分も復興・復旧のため力を尽くせる大人になりたい 、日本の明るい未来に希望を照らしたいという気持ちを強く抱き、秀光中等教育学校への入学を待ちわびていました。

 震災後も余震が続き、入学式は5月に予定されていましたが、私たちのために校長先生をはじめ、たくさんの方々が準備をしてくださり、4月21日、晴れて、秀光生になることができました。あの日、多賀城校舎の桜は、私たちの入学を祝うかのように艶やかに咲き誇り、私たちは大きな期待を抱いてグローリーホールの門をくぐり、不安と緊張のまま入場しました。私たちは最前列で6年生からコサージュをつけて頂き、秀光生としての自覚を一層強めました。こうして私たちは、温かく迎えられ、秀光生としての生活は始まりました。

 思えば、震災はもとより、数々の苦難と苦しみを乗り越え、クラスメートとなった仲間たちとの出会いは、まさに奇跡的でした。それは、青春時代の苦楽を共有したかけがえのない家族のような存在です。また、そんな仲間と過ごした6年間の日々は、私にとって何ものにも代えがたい宝物です。

 私たちは、学年の進行に従い、学校行事に対する姿勢・態度を向上させていきました。低学年の頃は、意見が食い違い、喧嘩や衝突を繰り返しましたが、次第に互いの性格や特徴を理解していきました。圧巻は、5年次の最後の合唱コンクールでした。朝・昼・放課後の練習を重ね、団結力を強めていきました。その結果、お互いを深く知り合い、絆を深め、最優秀賞、朗読賞、伴奏者賞、指揮者賞の全てを制覇・達成したのです。私たちは、気持ちが繋がったときに出来上がる音楽の素晴らしさを体感することができました。

 また、スポーツ好きの人が多い私たちの学年にとって、球技大会も情熱を注いだ学校行事でした。なんと言っても、2年生からの5連覇達成という金字塔を打ち立てることができた ことは、私たちのかけがえのない思い出になっています。

 さらに、秀光の教育の特色であるハワイやニューヨーク研修は、英語力アップと異文化を学ぶ貴重な体験でした。京都研修においては、特徴的な日本文化に触れ、大感動でした。また、大学見学や教授の模擬講義、病院での研修などにより、大学進学への興味・関心を高め、進学についての考察を深める最高の機会となりました。

 部活動でも、私たちは全力で取り組みました。先生方の熱い指導のもと、目標達成を目指して全力で疾走し、練習に励んだあのかけがえのない日々は、一生忘れることのない思い出です。

 5年次からは、校長先生のご尽力のおかげで、私たちは立派な教育環境の宮城野校舎で学習することができました。e-ラーニングも本格的に取り組むことができ、また、ゼルコバホールも身近な存在となり、各施設を快適に利用することができました。何よりもまして、1年生から6年生まで揃って勉強と部活動に打ち込むことが可能になり、秀光生としての帰属意識も強くなりました。また、仙台育英学園高校の特別進学コースから、新たな仲間が加わり、より一層勉学に励むきっかけになりました。そのおかげで、私たちは互いに切磋琢磨しながら、自己の弱点を克服し合い、充実した日々を過ごすことが出来ました。

 こうして6学年に進級した私たちは、最後の団体戦である大学受験においても、個々人の適性を踏まえ、学年が一致団結して、目標に挑戦し、大きな力を発揮したと思います。

 今、秀光での6年間を振り返り、その足跡を漢字一文字で表すとすれば、大きいという漢字の「大」だと思います。「大」という字は「一」に「人」と書きます。私たちは、全てを失ったかのように思えた震災の年にこの秀光に入学し、「一」から出発しました。そして、日々の授業をはじめ研修旅行や学校行事を通し、多くのことを学び、様々な国々や各地域の文化、歴史、芸術に触れてきました。その数々の教育活動のおかげにより、未来の日本を背負って立つ「人」になれるよう、この秀光で私たちを 一段一段上へ導いていただきました。言い換えるとまさに、「一」から「人」として「大」きくしていただいた6年間でした。

 さて、現代の世界情勢は、アメリカ合衆国の大統領がドナルド・トランプ氏となり、世界各国の政治、経済は予断を許しません。また、イギリスのEU脱退などもあり、経済、金融、産業が見通しのつかない不透明な時代となり、現在、世界は歴史的大転換期に遭遇しております。そんな中、日本においては、国の 教育改革の名の下、グローバル化に焦点を当てた教育が進められています。これから私たちが生きる社会は、まさにグローバル社会です。だからこそ、卒業後の歩む道は違っていても、それぞれがそれぞれの場所で、この秀光で学んだことを生かして、世界の諸問題の解決に向かう姿勢を忘れず前進したいと思います。

 今日で私たちは秀光を卒業します。後輩たちは、スポーツチャレンジでの運営や生徒会活動に深い関心を示し、積極的に取り組んできました。また先ほどは、生徒会長の決意のこもった送辞をいただき、この先も秀光を一層飛躍させてくれると信じ、この秀光を安心して巣立つことができます。

 先生方は、未熟な私たちに学問だけではなく、多くの教養と知識を授け、今後の社会人としての生き方などを、朝のホームルーム前から、夜遅くまで熱心に指導してくださいました。また、18年間私たちに常に愛情を注ぎ、育ててくれた両親や家族に感謝の気持ちでいっぱいです。この場を借りて、心より感謝申し上げます。

 震災からまもなく6年が経とうとしています。当時小学生だった私たちは、本日、秀光中等教育学校を卒業し、大きく羽ばたこうとしています。秀光での生活は、かけがえのない6年間となりました。先生方、保護者の皆様、地域の皆様に、私たちは支えられ、導いていただきました。 秀光で過ごした思い出や成功へのプロセスは、今後の人生において、いつでもどこでも用いられる最強の羅針盤です。この指針と至誠・質実剛健・自治進取の建学 の精神をしっかりと持ち、宮城否日本の復興、世界の発展の為に、貢献できる社会人になれるよう日々努力してまいります。

 最後になりましたが、秀光中等教育学校の益々のご発展と、加藤雄彦 校長先生はじめ諸先生方、そして在校生の皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げ、答辞といたします。

平成29年2月28日
 第16期卒業生代表 小野寺