2021年4月開校

お知らせ

秀光オーケストラ『オータムコンサート』

“オケ部卒業”の4人が
5年分の思いをこめて

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演奏を楽しんでもらう機会を得られないままに

 本学園ホームページ、『キラリ☆Sweat&Smile Vol.10』でも紹介してきたとおり、秀光オーケストラ部は、“コロナ禍での活動”という大きな困難の中で2020年の練習を続けてきました。学校の休業や「三密を避ける」など、さまざまな制約の中で練習こそ続けたものの、毎年3月恒例のスプリングコンサートは中止、7月の新入部員にとっては初の発表の場であるフレッシュコンサートもなく、また、2年ほど前からスタートさせた障害者施設でのボランティア演奏も、定禅寺ストリートジャズフェスティバルもなし…。練習を重ねながらも、“演奏を楽しんでもらう”機会を得られないままのジレンマに悩んできました。

オケ部独自のコンサートを夏の時期からあたためて

 ようやく、“演奏を楽しんでもらう”チャンスが得られたのは10月3日に開催されたインターネットを介してのオンライン秀光祭。部員たちは配信用のビデオカメラを前に演奏しました。
 「秀光オーケストラ部の“1年間の総決算”を実行できたという意味で、とても感慨深いものがありました」と当時の部長の奥村さん(秀光コース2年)。
 ですが、オンラインでの放映のための事前収録では、演奏する側にとっては物足りなさも残ります。やはり、秀光オーケストラとしての本当の意味での総決算となるコンサートを開きたい。この思いから、部員たちは“オータムコンサート”と名付た秀光オーケストラ独自のコンサートの企画を、夏の時期からあたため、着々と準備を重ねてきたのでした。

5年間の成果をゼルコバホールのステージで

 こうして11月7日、宮城校舎ゼルコバホールで、部員の保護者等、ホールに迎え入れたのは限られた人数のお客様方ながらも、2020年のオータムコンサートが開催されました。
 ステージでは新人部員たちによる独奏、アンサンブルから始まり、保護者の方々のあたたかい拍手を受けながら演奏は進みました。そしてこの日のハイライトとなったのは、このコンサートをもって秀光オーケストラを“卒業”することになる秀光コース2年生によるソロ演奏(ピアノ伴奏付き)。部員として、フルート、ヴァイオリン、コントラバスと、それぞれ担当の楽器を手にし、5年間の秀光オーケストラでの成果を披露しました。
 ソロ演奏を行った部員と演奏曲目は以下のとおり。

1 山野辺
  ベートーヴェン作曲 ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」第1楽章

2 久道
  カプッツィ作曲 コントラバス協奏曲 第1楽章

3 佐々木
  フォーレ作曲 ファンタジー

4 奥村
  ベートーヴェン作曲 ロマンス 第2番 

 演奏を終え、秀光オーケストラを“卒業”した4人からは、『オータムコンサートを終えて』のメッセージを寄せてもらいました。
 以下に紹介します。
 

コツコツ積み上げてきたものは
いつか自分の宝になります

山野辺さん  杉の入小出身

先輩方の演奏を聴き
私もこのステージに立ってみたい、と

 私は中学1年生の時、オーケストラというものを全く知らない状態で先輩方の演奏を聴き、このステージに立ってみたいと思い入部しました。入部したての頃はほぼ基礎練習のみで、先輩方が演奏している曲にも一部分でしか参加できませんでしたが、その後ろ姿はとてもかっこよく、輝いて見えました。幼い頃からピアノを習っていたので、楽譜通りに弾くこと自体はあまり困難に感じませんでしたが、オーケストラで楽器の音を聴きあい、音楽を作り上げていくことはとても難易度が高く、楽しんで演奏している人にしか感じ取れない不思議な感情が生まれることを知りました。そして個人練習やパー卜練習、セクション練習などを通して曲の雰囲気を考え、その雰囲気にのめり込み演奏をすることの大切さも知りました。

先輩たちに追いつきたい、
綺麗な音を奏でられるようになりたい

 私はヴァイオリンを担当していましたが、先輩方の奏でる音はとても綺麗で、教えていただいていた時も自然に笑顔になってしまったほどでした。追いつきたい、綺麗な音を奏でられるようになりたいという目標を持ちながら練習していくうちに、あっという間に高校2 年生になりました。先輩としての行動が求められる側になったとき、私は改めて先輩方の偉大さに気づかされました。練習メニューや今後の活動、その他の問題から目を背けることなく向き合い、オーケストラ部を円滑に進めていってくれた先輩方がいたからこそ、私たちが楽しく明るく過ごせていたのだと思いました。後輩も、今は分からなくてもいつか気づくときがくるといいなと感じています。練習をさぼりたくなる時も、嫌だと思う時もありましたが、コツコツ積み上げてきたものはいつか自分の宝となるということを過去の自分に伝えたいです。
 

日頃の活動を通して伝えたかったことは
練習量と仲間の支えの大切さです

佐々木さん  石巻鹿妻小出身

先生方のサポートと同級生の励ましで
フルートのソロ演奏を乗り切りました

 オーケストラ部に入部して5年、最後の舞台であるオータムコンサートが終わりました。最後の曲として選んだのは、G.フォーレの「ファンタジー」です。作曲家であるG.フォーレは、私が中学1年生の時に初めてソロで演奏した曲、「シチリアーノ」を作曲しています。偶然ではありますが、同じ場所へ戻ってきた感じがして、気付いたときには少し笑みがこぼれました。ゆるやかで憂いを帯びた旋律から始まり、徐々に盛り上がった後、華やかなロンドへと展開する曲です。いくつもの曲を聴き比べ、数日後まで一番心に残っていたものを選びました。それとともに、最後だから自分の限界を試してみたいな、と考え、今まで挑戦したことのない連符ばかりの曲に決めました。  家に帰っても電車の中でも、寝る前も曲を口ずさみ、本番2週間ほど前からソロ曲を中心に生活していたようなものでした。実力の無さを痛感し、不安しかない練習期間でしたが、伴奏の先生の多大なるサポートやフルートの講師の先生、同級生の励ましの下で何とか満足いく演奏ができたかと思います。
 演奏が終わり、舞台裏へ戻った途端に今まで焦りや緊張と不安ばかりで気付かなかった「部活を引退する」という実感がどっと押し寄せてきました。先輩方の演奏や振る舞いに憧れて入部し、優しい頼もしい先輩方の中で育ったこともあり、先輩に対する信頼と憧れは私の中で絶大でした。引退してもなお、私が後輩や管楽器の仲間にとってそのような存在になることができたとは到底思いませんが、「練習量と仲間の支えは何よりも大切だよ」、ということを最後まで伝えることができたかと思います。

合奏の楽しさと一体感を味わい
大きく成長できた幸せな5年間でした

 幸せな思い出が沢山詰まっているオーケストラですが、何よりも楽しかったことは合奏でした。呼吸が揃うこと、金管楽器の華やかなサウンドに弦楽器が優雅に重なる音など、挙げればきりがありません。そして今まで他校の初対面の生徒さんや交響楽団の先生方と演奏させていただきましたが、接点がなくとも同じ曲を合奏することで一体感をひしひしと感じ、心までつながったような気がしたことが忘れられません。
 最後の年がコロナ禍だったこともあり思い描いていた活動はできませんでしたが、最後にこのような演奏の機会をいただけて本当に嬉しく思います。オーケストラ部に入部して早5年が経ちましたが、自分自身、大きく成長した5年間でした。演奏した曲目、部員、講師の先生方、練習中の苦難や笑いあったことなど、胸に秘めてこれからも自分の道を進んでいこうと思います。音楽に携われたことがとても幸せです。
 

初めて触れたコントラバスが
私の大切なパートナーになりました

久道さん  下増田小出身

練習でできないことは
本番でもできるはずがありません

 私がオーケストラ部に入部したのは、中学2年生の時、友人が部活動体験に誘ってくれたことがきっかけです。最初は体験だけで帰ろうと思ったのですが、コントラバスを体験したときに、「コントラバスをもっと弾きたい!」と強く思いました。今まで小学校で習う鍵盤ハーモニカやリコーダーしか吹いたことがなかったので入部したときは楽譜が読めず、とても苦労しましたが、先生や先輩、同級生が一から丁寧に指導してくださいました。
 そして1年後ぐらいに、ジョイントコンサートというプロの演奏家と共演する機会がありました。当時は、山形交響楽団さんとドヴォルザーク作曲第九番の新世界を演奏したのですが、練習しても全然弾けるようにならず、そのまま本番を迎えることになってしまいました。練習でできないものが本番でもできるはずがなく、とても悔しくて大反省したことを覚えています。その時から「もっとコントラバスが上手に弾けるようになりたい!」と思いました。

地道な努力を続け
本番は楽しく演奏できました

 最初は何から始めればよいのか分かりませんでしたが、まずプロの交響楽団さんの演奏会へ行ってみようと思い、実際に聴きに行きました。その時は一番後ろの席で聴いていたのですが、コントラバスの音色や響き方が全然違うことにとても驚きました。その時に自分の目標にするコントラバスの音が見つかりました。それから定期演奏会に通い、弓の使い方などをたくさん観察し、自分なりに勉強していました。そして約1年後の高校1年生の時に、コントラバスの先生とのご縁があり習えることになりました。レッスンでは楽器の弾き方だけではなく、フレーズのイメージや作曲家のことなど幅広く教えていただきました。今回、オータムコンサートで演奏した曲は先生方と創りました。本番はとても緊張しましたが、聴いてくださった方が温かく、弾いているうちにどんどん楽しく演奏できました。
 将来、私は社会人になってもコントラバスを弾き続けたいと考えています。秀光オーケストラ部に入部していなかったら、コントラバスと出合えていませんでした。本当にオーケストラ部に入り、様々なことに挑戦して良かったなと強く思います。これからもコントラバスを含め、他のことにも挑戦していきたいと思います。
 

部員の演奏が人の心に寄り添い
元気を届けられると信じています

奥村さん 山形第一小出身

演奏者の気持ちは音に表れます
力強い表情が出ていました

 5年間の活動の集大成がオータムコンサートとなりました。世の中が見えない恐怖に日々脅かされている中で、「オーケストラ部として、楽器演奏者として、少しでも多くの方に音楽を届けよう」そのような気持ちで臨んだステージでした。会場では観客の皆さんの温かな拍手に包まれて、無事に引退を迎えることができました。
 オータムコンサートを終えて、部活動が終わってしまった寂しさを感じつつ、今後の秀光オーケストラ部の活動への期待の気持ちが大きくなりました。私自身、部活動を引退してから約1カ月が経過しました。近頃、再び新型コロナウィルスが流行のスピードを上げています。多くの人々が、不安を感じて毎日を過ごす中で、音楽の力を使って元気を与えてくれる存在というのが、どれほど大きなものか。演奏者という立場を離れると、改めて考えさせられることがあります。だからこそ、これからの秀光オーケストラ部が作り上げていく「音楽」というものに期待の気持ちを寄せています。音楽は音に演奏者の気持ちが表れると言います。その言葉通り、演奏者がどのような気持ちで演奏しているかはマイナスな気持ちもプラスな気持ちも、音を通じてお客さんに伝わってしまいます。秀光オーケストラ部が奏でる音の表情は、力強いものでいてくれるのではないでしょうか。部長という立場から部員を見ていて、そう確信しました。

少ない活動機会に思いを集約し
大きく成長しました

 今年度は、私たちの力が試された年になったと思います。活動できる機会は少なくても1回にかける思いは強く重く、大きなものへと成長しました。私はオータムコンサートを終え、秀光オーケストラ部から少し離れることにはなりますが、後輩たちが奏でる音楽に支えてもらいながら、歩んでいこうと思います。秀光オーケストラ部は、私を成長させてくれたものであり、これからも多くの人の心に寄り添うものであってくれると信じています。